ヒジャブ姿が印象的のインドネシアは西ジャワ州出身の女性ミクスチャー・バンドの1枚目となるEP。過去にアルバム1枚とシングル6枚を発表し、イスラム教の模範やジェンダー差別に囚われず、反戦や女性の権利、自然保護などの社会問題などをテーマに掲げ、イスラム保守勢力と真っ向から戦っているバンド。
Black Sabbath(ブラック・サバス)やEric Clapton(エリック・クランプトン)、Rage Against the Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)やRed Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)などの、60年代のブルースロックやヘヴィーメタル、90年代のミクスチャーロックに影響を受け、インドネシアの言語のひとつであるスンダ語で歌われた歌詞や、日本の女性バンド、Super Junky Monkey (スーパー・ジャンキー・モンキー)のような、新しいものを切り開いていく男勝りなサウンドが魅力的。アルバムを重ねるごとに、よりファンクやエスニックな要素が強くなり、甘い歌声などの要素を加え、さらに深化してきた。
日本語で『状況や状態が変化していく過程』という意味の本作では、前作までのミクスチャーをベースに、メタル色がさらに強くなったサウンドに深化した。ダークな60年代メタルと、ヴォーカルのダークで艶やかな歌声が混ざり合い、怒りや立ち向かっていく闘争的な感情ながらもメロディックな美しいコントラストを生み出している。
「Renegade Sheep(反逆の羊)」では、時代の流れや集団心理に歯向かうことを選んだ自由な精神を持つ者たちの叫びを歌い、「Put The Gun Down(銃を下す)」では、戦争や残酷さを増す世界の中で、力強い平和のメッセージを込めている。「Madness of The Present Century(今世紀の狂気)」では、縁故主義や権力乱用などで腐敗したインドネシア政府を痛烈に批判している。そして「Rumah Tanah Tidak Dijual(家と土地は売っていない)」では、開発、採掘、観光業を装った森林伐採と土地収奪の脅威が、現在も続いている現状を訴えている。
サウンド形態こそ全く違うが、まさにインドネシア盤riot grrrl(ライオット・ガール)。イスラム社会にフェミニズムを掲げ、自然保護の社会問題から政治的な怒り、精神的豊かさまでも追求した知的なバンドなのだ。