現在ハードコア・トレンドの最前線にいるニューヨークはロングアイランド出身のPain of Truth(ペイン・オブ・トゥルース)とカルフォルニアはサンノゼ出身のSunami(スナミ)によるスプリット。
Pain of Truth(ペイン・オブ・トゥルース)は、1ニューヨーク訛りのヒップホップ調のヴォーカルから、轟音のリフ、ブラストビート、突如落とすビートダウンと重く厳かなブレイクダウンなどのフレーズが目まぐるしく入れ替わり、1994年以降のニューヨーク・ハードコアを集約したようなサウンドを展開している。ニューヨーク・ハードコア・シーンの荒々しく危険な雰囲気を体現している
「Shattered Past(シャッタード・パスト)」では<生きる代償。欺瞞と腐敗に満ちた世界で、自分のものを探し求めて>と歌い、「The Enemy(ザ・エネミー)」では<国内で敵のように扱われた。でも決して屈しなかった。自分の過ちを正し、間違いを正した。もし君がそう感じていたなら 自分の重みに耐えるべきだった>と歌っている。
ここにはタフガイの憎悪に満ちた悪口はない。腐りきった世の中で、自分の信念を貫き、失敗を認め成長しようと、世の中の悪と戦いならも、抗い進み続ける強い意志を歌っている。
対するSunami(スナミ)は、ブレイクダウンとブラストビートにダウンチューンされたリフ、連続して落すビートダウンなど、最先端のハードコア・トレンドを取り入れつつも、スピーディーなハードコアと、グラインドコア、デスメタルを融合したハイブリッドなサウンドにしっかりと溶け込ませている。西海岸ギャングスターラップをイメージさせるカラッとした攻撃的なサウンドに仕上がっている。
「Doubt(ダウト)」では、<疑いの中で生きるか、諦めて死ぬか、戦うか>と歌い、「Fence Walker(フェンス・ウォーカー)」では、<君は皆に愛されたい。忠誠心なんてない。ただ耳元で嘘をつくだけ>と、裏切りや八方美人の態度をとる友人が失墜していく顛末を幻滅と嘲笑を込めて歌っている。まるでマフィアの報復のような、信を裏切った者が待ち受ける運命と恐怖がそこにはある。
どちらのバンドも西海岸と東海岸らしい個性を持ちながらも、最先端のハードコアを展開している。例えるならGerms(ジャームス)とMinor Threat(マイナースレット)がスプリットを出したような、それほどの価値のある現在のハードコア・レジェンドが共演した作品なのだ。