SOUL GLO(ソウル・グロー)
『DisNigga (ディスニガ)』までの活動を振り返ったインタビュー

———“Violence Against Black Women Goes Largely Unreported(バイオレンス・アゲインスト・ブラック・ウーマン・グース・ラージェリー・アンリポーティドゥ)“では、<黒人女性への暴力がほとんど報告されていない>と歌っております。これは実際にあった事件が歌詞になっているのでしょうか?

P:この曲と“New Humanism(ニューヒューマニズム)”は、叔母が在宅中に、家宅侵入され暴行を受けた事件について歌っている。この曲では、俺たち黒人の労働に対する一般的な白人の認識が、経済に悪影響を与えているという理由で、黒人女性に対する暴力的な死(長時間労働という意味?)が優先されている、めちゃくちゃな状況について考えている。黒人女性は、俺たち黒人男性が定職につけるほぼすべての業界で、より長い時間働いているにもかかわらず、少ない報酬で仕事をしている。それ自体が暴力の一形態だ。黒人女性は、性別を超えた人種的連帯を支持する期待をもちながら、黒人男性による暴力に対処している。俺は黒人女性が人間の生活と反対の絵であると発言するとき、古典的な意味で人類は白として描かれている。(白人が作り出したシステムに黒人も無意識に従っているという意味)。たわごとのような支配は、それ自体が白人社会に影響を受けた(亭主関白的な)男らしさとして黒人社会にも多大な影響を受けている。謎の知恵だ。そして無実は同じ点で女性らしさを通して描かれている。このため、黒人女性は人間の生活のアンチテーゼであり、世界はそれの事実にもっと目を向けるべきだ。

———2016年5月には『UNTITLED LP(アンタイトルテッド・LP)』を発表しました。このアルバムから曲のタイトルが番号の曲が初めて登場します。そのあと『Live @ WKDU』の“31”まで、番号の曲が続きます。番号のみの曲名にはどんな意味があるのでしょうか?

P:曲名は、デモの段階で曲を書いた順番に番号を付けてたんだ。でもある時点から、数字に対してこだわりを持ち、言葉のタイトルを止めていたんだ。だが曲数が増えると、今度は数字によるタイトルだと、度の曲か分からなくなり、混乱する機会が増えた。だから言葉のタイトルにまた戻したんだ。

———“5”では<白人至上主義をグローバルシステムとして理解していなければ、混乱するだけ。>と歌っております。SOUL GLO(ソウル・グロー)にとって、グロバリゼーションとはどういうものなのでしょうか?

P:この曲は、白人至上主義者と闘った黒人の作家、Neely Fuller Jr(ニーリー・フラー・ジュニア)の言葉を引用している。曲の後半では、俺の怒りが込められている。黒人である俺にとって人種差別のグローバル化は、どこの国に行っても差別の目で見られることを意味している。人種差別をする彼らの世界観を否定するためにこの曲を作った。差別がどれほど絶えず起こっているか、深く理解する必要がある。そうじゃなきゃ、世界で起きている出来事が、俺にとって全く意味のないものになってしまう。

———“1”や“5”の歌詞からは、圧倒的な財力と権力と武力を持った白人と、貧困で無抵抗な社会的弱者のアフロ・アメリカンという内容の歌詞が目立ちました。『UNTITLED LP(アンタイトルテッド・LP)』のテーマを教えてください。

P:『UNTITLED LP(アンタイトルテッド・LP)』は、過去の歴史を振り返りながら自己を探求する。そのなかで自分の立ち位置を見つけ、観てきたものや学んだことを肌で感じて、理解することがテーマになっている。

———19年6月に発表された『THE NIGGA IN ME IS ME (ザ・ニガー・イン・ミー・イズ・ミー)』のアルバムジャケットは、ツアー中に立ち寄ったミズリー州の高速道路で、白人の警官が運転するパトカーにつかまったときの写真を使用しております。このとき白人の警官に人種差別的行為を受け、罰金を科せられ、訴訟にまで発展したと聞きます。詳しい内容を教えてください。

P:この事件の詳細にに関しては、説明することが出来ない。でもジャケットの写真は、俺たちの国では、いつでも黒人に起こり得ることを示している。

———“21”では、2016年8月1日にメリーランド州ランドールズタウンのボルチモア近郊で、黒人女性のコーリンゲインズとその息子が、ボルティモア郡警察によって、銃殺された事件について歌っております。具体的な内容を教えてください。

P:そうなんだ。“21”で、コーリン・ゲインズがボルティモア郡警察に殺害されたと歌ったけど、当時、銃撃戦に参加した警官の名前は、警察の命令で非公開になっていたんだ。 同時に、警察は彼女のフェイスブックのアカウントを、強制的に削除した。彼女のアカウントには、彼女が撮影した銃撃戦のビデオが文字通り含まれていたからなんだ。

“31”では、投獄された若者と音楽を演奏するボランティアプログラムで、Malique(マリック)という若い男に出会ったことについて歌っている。マリックと俺はお互いにロックが好きだったので、いろいろなジャンルの音楽について話した。しばらくマリックと会っていない間に、彼はプログラムに参加するのを止めてしまった。その間に彼は9ヶ月間独房に閉じ込められていた。その事実を俺が知ったのはずいぶん後になってからだ。 彼はずっと長い期間、刑務所に入っていた。 彼が独房の孤独から抜け出したとき、ひどく塞ぎこんでいた。そして音楽への情熱を失ってしまった。その事実に俺は驚いている。

どちらの件も、犯罪者の黒人に対して非常に軽率な態度をとる俺たち社会の保護者(警察)が、命の尊厳を無視して黒人に接していることが分かる事例なんだ。

———2020年11月6日にリリースされた『Songs to Yeet At The Sun(ソング・トゥ・イエット・アット・ザ・サン) 』の“(Quietly) Do The Right Thing((クイックリー)ドゥ・ザ・ライト・スィング)”では、<(静かに)正しいことをする>という歌詞が印象的です。また“Mathed Up(マッシュッド・アップ)”では、< ニガスは拡大した富の格差に巻き込まれ、勝つことはできない!~>と歌っております。『Songs to Yeet At The Sun(ソング・トゥ・イエット・アット・ザ・サン) 』のコンセプトを教えてください。

P:『Songs to Yeet At The Sun(ソング・トゥ・イエット・アット・ザ・サン)』は、俺の人生で起こった出来事を、スナップ写真のようにまとめた内容なんだ。そこにはバンド・メンバーの個人的な生活の出来事も含まれている。俺たちが黒人であることを念頭において、黒人の存在を国民に理解してもらうことをつねに意識して、歌詞を書いている。

———『DisNigga, Vol. 1 (ディスニガー,Vol. 1)』では、インダストリアル・ラップからスクリーモ、ポストハードコアをごちゃまぜにしたサウンドが印象的です。まるでハードコア歴史を総括したような内容です。どのようなサウンドを目指して、この作品を制作しましたか?

P:『DisNigga, Vol. 1 (ディスニガー,Vol. 1)』は、スペースがない曲をコンセプトに制作されたシングルなんだ。スムーズに順番に曲が進むことによって、曲自体に独自のアイデンティティを形成している。俺たちには、曲作りに対してたくさんのアイデアがある。もしアイデアがうまくいかないのなら、その曲はアルバムに残したくない。曲自体に統一されていないけど、そんな作品はアメリカの音楽で、たくさんあった。黒人音楽と繋がっていることを除いてね。

SOUL GLO

「DisNigga, Vol. 2 」