New York Hardcoreニューヨークハードコア・シーンについて (1990-1999)PART-2 ブロンクス・ハードコア バンド編



 

The High and The Mighty(ザ・ハイ・アンド・ザ・マイティ)

1984年、まだ高校生だった Drew Stone(ドリュー・ストーン)は、のちにニューヨーク・ハードコア・ドキュメンタリー『The New York Hardcore Chronicles Film(ザ・ニューヨーク・ハードコア・クロニクルズ・フィルム)』を制作することになる人物であり、その彼が結成したバンドが The High and The Mighty(ザ・ハイ・アンド・ザ・マイティ) である。

サウンドは、ボストン・ハードコア SSD (Society System Decontrol)に通じる荒々しさと、ニューヨークらしいキャッチーさを併せ持つオールドスクール・ハードコア。短く荒々しいシャウトを中心としたヴォーカル、スピード感、直線的なアタック、そして“暴走感”の強さは、The High and The Mighty(ザ・ハイ・アンド・ザ・マイティ)の大きな特徴といえる。




アティチュードは、初期ニューヨーク・ハードコア特有の DIY精神、日常の苛立ち、反権威、反社会的圧力、抗争、反発、自己主張 を前面に押し出している。 DIY精神を貫き、ニューヨーク・ハードコアの原型といえるサウンドを提示したバンドであり、2023年のライブ映像紹介文にもあるように “Always hand held, always DIY(いつも手作業で、常にDIY)” という姿勢が一貫している。この価値観は、後年の Drew Stone(ドリュー・ストーン)の活動NYHC Chronicles(ニューヨーク・ハードコア・クロニクス)にも直結している。

バンド解散後、Drew Stone(ドリュー・ストーン)は 1984年に Antidote(アンチドート)へ加入し、ニューヨーク・ハードコアの中心人物として活動することになる。 彼は Mighty C.O.’s(マイティ・シーオーズ) → The High and The Mighty(ザ・ハイ・アンド・ザ・マイティ) → Antidote(アンチトード)という流れでキャリアを進め、ブロンクスから初期NYHCシーンへの橋渡し役を果たし、ニューヨーク・ハードコアの初期形成に大きく寄与した。

 

Savage Circle(サヴェージ・サークル)

1982年、ブロンクスで結成された最初期のニューヨーク・ハードコアを代表するバンドである。Javi Savage(ジェイヴィ・サヴェージ/本名 John Souvadji〈ジョン・サヴァジ〉)を中心に結成され、彼は後にインディー・レーベル Big City Records(ビッグ・シティ・レコーズ) とハードコア・ファンジン Big City Fanzine(ビッグ・シティ・ファンジン) を創設した。これらの活動を通じて、The Mob(ザ・モブ)をはじめとする初期ニューヨーク・ハードコアの音源を多数リリースし、当時活動を始めたばかりの新人バンドを積極的に紹介した。

Savage Circle(サヴェージ・サークル)が1982年に発表した唯一の EP『Savage Circle(サヴェージ・サークル)』は、ブロンクス最初期のハードコア・シーンを記録した重要作である。そのサウンドは、最速・最短・最粗を極端に突き詰めた原始的なスラッシュ型ハードコアで、構成はほぼ「イントロ+1パート」で完結する。楽曲は 15〜60 秒台の極端に短い尺で、直線的で粗削りな高速ダウンストロークのリフ、怒号に近いボーカル、そして一発録りの荒い録音そのものが Savage Circle(サヴェージ・サークル)の魅力となっている。



直線的で粗削りな短尺曲には Urban Waste(アーバン・ウェイスト)の影響が感じられ、同様の構造性は初期 The Mob(ザ・モブ)からの影響も見られる。また、極端な速度は初期 Bad Brains(バッド・ブレインズ)の影響が強く、荒々しさは初期 Poison Idea(ポイズン・アイデア)にも匹敵する。ヴォーカルの Javi Savage(ジェイヴィ・サヴェージ)の声はメロディを排した短い叫びで、ほぼ掛け声と怒号に近いシャウト。1982年当時のブロンクスの荒れた空気をそのまま録音したかのような質感を持つ。

Savage Circle(サヴェージ・サークル)の歌詞は、ニューヨーク・ハードコア最初期のストリート感を最も荒々しい形で体現している。歌詞は極端に短く、内容はシンプルで直接的である。「Kill Yourself(キル・ユアセルフ)」では自己破壊的な衝動、「We Don’t Have To(ウィ・ドント・ハヴ・トゥ)」では学校・家庭・社会規範など、若者が押し付けられるものへの拒絶と反抗と自由意志、「Don’t Do It(ドント・ドゥ・イット)」は瞬間的な怒りの爆発、「Hardcore Rules(ハードコア・ルールズ)」は速度、粗さ、反抗、DIYを肯定する内容で、自己規定のハードコア宣言している。「Kill Corps(キル・コア)」は“Corps(軍隊・組織)”を攻撃し、権威・組織・統制などの反権威・反軍事的への拒絶をしている。これらは、初期ニューヨーク・ハードコアのストリートに渦巻いていた苛立ちそのものを歌っている。

Savage Circle(サヴェージ・サークル)は、すべて手作業でアルバム・ジャケットを制作し、自主レーベルを立ち上げ、一発録りの荒い録音で作品を残した。DIY・反商業主義のアティチュードを掲げ、反抗・自己破壊的衝動・反権威をモットーに活動したバンドである。