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In Your Face(イン・ユア・フェイス)
1988年から1994年にかけて活動していたTHE ARSONS(ジ・アーソンズ)のヴォーカル、Marc Adams(マーク・アダムス)とTHE ARSONS とTOKEN ENTRY(トーケン・エントリー)のドラム、Ernie Parada(アーニー・パラダ)が在籍したロングアイランドはウェスト・バビロン出身のスケーター系メロディック・ハードコアバンド。
In Your Face(イン・ユア・フェイス)のサウンドは、ストレートで速いシンプルなオールドスクール・ハードコアをベースに、パンクよりりのコードワークと簡潔な曲構成、メロディックで煽情的なギター、シャウト気味のヴォーカルを特徴とする。さらに、ブレイクダウンやストップ&ゴー、そしてTOKEN ENTRY(トーケン・エントリー)に代表されるスケーター・コア的要素も取り入れている。
歌詞は、日常的な苛立ちの発散から、怒り・ユーモア・バカ騒ぎまで幅広く扱っている。「Get Nice(いい感じになれ/気楽にいこう)」や「I Can’t Skate(スケートできない)」では、スケートに挑戦することの楽しさや肩の力を抜いたスタンスを歌い上げる。一方、「The Grub(うじ虫/しょーもない奴)」「Ugly Girl(醜い女の子)」といった曲では、嫌いな相手への罵詈雑言や日常の不満をぶちまけるように表現し、バカ騒ぎ的なユーモアと苛立ちが混ざり合った内容になっている。
「In Your Face(イン・ユア・フェイス)」というバンド名が示す通り、“面と向かって言う/隠さずぶつける” というアティテュードが核にある。ロングアイランドという郊外らしく、貧困に起因する暴力的な社会批判よりも、個人的で日常的な怒りが中心となり、ミドルクラスが多く住む地域のスケーター・コアらしい苛立ちやフラストレーションを発散・爆発させるメンタリティが表れている。
ロングアイランドという郊外特有のメロディック感覚は Silent Majority(サイレント・マジョリティー)をはじめとする多くのバンドに大きな影響を与えた。In Your Face(イン・ユア・フェイス)は、その源流を形成した存在であり、ロングアイランド・メロディックハードコアの元祖といえるバンドである。
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Silent Majority(サイレントマジョリティー)
1990年から2000年にかけて活動していたメロディック・ハードコア・バンド。メロディック・ハードコアといっても、NOFXやBad Religion (バッド・レリジョン)などの西海岸のバンドや、Dag Nasty(ダグナスティ)やH2Oなどの東海岸のバンドたちと、異なるアティテュードとスタイルを持っている。
Silent Majority(サイレント・マジョリティー)の結成は1990年。初期には Splastic Action(スプラスティック・アクション/※奇妙にねじれた勢いを示す造語) というジョークめいたバンド名で活動していたが、ほどなく現在の名前へと変更した。 その後、メロディックで叙情的なヴォーカルラインと、荒々しいハードコアを融合させた独自のスタイルを確立していく。
そのサウンドは、ニューヨーク・ハードコアの硬質さとロングアイランド的な叙情性が融合したものだ。 ギターはメロディーラインが強く、ポストハードコア的なコード進行や叙情的フレーズを多用しつつ、ニューヨーク・ハードコア由来の硬質なリフも併存している。 Tommy Corrigan(トミー・コリガン)のヴォーカルはシャウト主体ながら、語りかけるようなリズム感と強いメロディ性を備え、感情の起伏が激しく、叙情性と怒りの双方を表現する。 ドラムはニューヨーク・ハードコア直系のタイトなビートを軸に、テンポチェンジやクリーン/ダーティ・ヴォイスの対比、メロディックなギターの絡み合いなど、曲によってはポストハードコア的なブレイクや変則的展開も見られる。メロディックだがアグレッシヴで、ニューヨーク・ハードコアの影響を受けたエモーショナルなサウンドだ。
メロディック・ハードコアながら、東海岸のDag Nasty(ダグナスティ)やH2O、西海岸のNOFXやBad Religion (バッド・レリジョン)などのバンドとの違いは、叙情的でエモーショナルなサウンドにある。Silent Majority(サイレント・マジョリティー)はニューヨーク・ハードコアの硬質なサウンドに、より強いメロディを加えた存在であり、とくにニュージャージーのLifetime(ライフタイム)からの影響が強く感じされる。1990年代後半のメロディック・ハードコアから、エモーショナル・ハードコアに移行していく流れの中で、その橋渡し的な役割を果たしたバンドといえる。
とくに1997年にリリースされた 『Life of a Spectator(ライフ・オブ・ア・スペクテイター)』 は、ニューヨーク・ハードコアの硬質さにロングアイランド特有の叙情性とメロディを融合させた作品である。このアルバムは、2000年代に Taking Back Sunday(テイキング・バック・サンディ)、Brand New(ブランド・ニュー)、The Movielife(ザ・ムーヴィーライフ)、Glassjaw(グラスジョー)、Bayside(ベイサイド)といったバンドがブレイクさせた、孤独で叙情的なロングアイランド・エモ/スクリーモの原型を築いた作品として高く評価されている。
歌詞は、個人的な葛藤を起点に、孤独、自己嫌悪、裏切り、閉塞感といった内省的で深く個人的なテーマを扱っている。 とくに 『Life of a Spectator(ライフ・オブ・ア・スペクテイター)』 では、愛することへの恐怖、自分の気持ちが誰にも理解されない苦しみ、期待に応えられない自分への無力感といった劣等感や低い自己肯定感、過去の関係にはもう戻れない寂しさによる友情の喪失、友人に囲まれているのに感じる孤独や人混みの中での疎外感、そして自分だけが取り残されていくような郊外特有の閉塞感と孤独が、内省的な筆致で描かれている。
そこには、クイーンズやブロンクスのハードコア・バンドに見られるような、ストリートの暴力性や、友情・仲間・裏切り・忠誠といった“外側の敵”に向けた攻撃性は存在しない。 ロングアイランド・ハードコアには、友人関係の疎外と喪失、内面の葛藤、孤独と焦燥、閉塞感といった、内側の敵を描く繊細で脆い独自の世界観が広がっている。
しかし、Neglect(ネグレクト)のように“死を切望する”破滅願望は存在しない。 Silent Majority(サイレント・マジョリティー)の歌詞では、嫌悪が苦悩へと変わり、自己分析を経て「このままでは終わりたくない」という叫びが生まれ、そこに“変わりたい”という希望の断片が残される。 彼らの表現は、破滅ではなく再生の可能性をつねに内包しているのだ。
Silent Majority(サイレント・マジョリティー)は、ロングアイランド・ハードコアのなかでもメロディック/エモーショナル・ハードコアの基盤を築いた中心的存在である。メロディックなギター、内省的で個人的な歌詞、ハードコアの強度を保ちながら脆弱な感情表現を織り込むスタイル、そして郊外の孤独や焦燥を描く世界観など、ロングアイランドらしさを確立した“創始者”といえる存在だ。
叫びではなく吐露に近い語り口の歌詞とヴォーカル、メロディックなギター、エモーショナル・ハードコアの強度とロングアイランド特有の脆弱さを共存させる表現は、後続の Glassjaw(グラスジョー)、The Movielife(ザ・ムーヴィーライフ)、Crime In Stereo(クライム・イン・ステレオ)、Bayside(ベイサイド)、Capital(キャピタル)といったバンドに強く受け継がれ、ロングアイランド・ハードコアの音楽的 DNA となった。
Silent Majority(サイレントマジョリティー)は、郊外の若者文化に根ざしたロングアイランドらしい“感情のリアリズム”を最も体現したバンドであり、彼らがいなければ、ロングアイランドのメロディック・ハードコアからポスト・ハードコア、さらにはスクリーモへと続く系譜は成立しなかっただろう。まさに、スクリーモ系ロングアイランド・ハードコアの先駆者と言える存在である。