Surfer James(サーファー・ジェームス)
DEMO2019

デトロイト出身のパワーヴァイオレンス・バンドの2作目のデモ。IGGY POP(イギー・ポップ)からNEGATIVE APPROACH(ネガティブ・アプローチ)を経てラディカルに進化したパワーヴァイオレンスなサウンド。

 

MAN IS THE BASTARD(マン・イズ・ザ・バスタード)系のパワーヴァイオレンスに、デトロイト特有のナパーム弾のようなノイズギターにインダストリアルな機械音を取り込んだ前作と比べると、今作では、バイクの排気音のようなスロットル・ギターが特徴的で、スローテンポから突如ハイスピードに変わる、ノイジーで汚くやさぐれたサウンドを展開している。パワーヴァイオレンスという括りのなかでは同じだが、若干方向性が異なる仕上がりだ。

 

それにしても荒廃した工業都市を想像させる汚くやさぐれたサウンドからは、制御を失ったコンピューターのようなマッドな衝動とストリートの荒くれた怒りが宿っている。まさにニューヨークにもロサンゼルスにもボストンにもDCにもないハードコアのスタイルなのだ。これから発売されるであろうフルアルバムが楽しみで、才能を感じさせる作品だ。

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DEATH RAY VISION(デス・レイ・ヴィジョン)
Negative Mental Attitude(ネガティブ・メンタル・アティテュード)

OVERCAST(オーバーキャスト)&元KILLSWITCH ENGAGE(キルスイッチ・エンゲージ)のギターPete Cortese(ピート・コルテス)と、キルスイッチ・エンゲージ&オーバーキャストのベースMike D’Antonio(マイク・ダントニオ)に、FROZEN(フローズン)のドラムColin Conway(コリン・コンウェイ)、Chuggernaut(チュンガノート)のボーカルJeff Gard(ジェフ・グラード)によるメタルコア・バンドの18年の11月に発売された2作目。

 

もともとサイドプロジェクトとして始めたバンドで、近所に住む気心の知れた仲間たちが集まって結成。成り立ち自体、ラフな精神で気楽さが漂うバンドであった。だからキルスイッチ・エンゲージらしさのある作品を作らなくてはいけないという制約や、ファンの期待に応えなければならないというプレッシャーはなく、自分たちが好きな音楽だけを寄せ集め、好きなサウンドだけを奏でている。

 

今作ではボーカルのSHADOWS FALL(シャドウズ・フォール)&OVERCAST(オーバーキャスト)のBrian Fair(ブライアン・ファイアー)がセントルイスに引っ越しをしたため脱退。代わりにジェフ・グラードが加入。前作まで低いトーンの怒声で気合の入ったボーカルスタイルが、ハイトーンな歌い方に変わっている。そのためよりエネルギッシュでハイテンションなサウンドに変化した。

 

今作でも前作のシャドウズ・フォールをベースにしたメタルコア・サウンドに変わりはない。だが今作ではいろいろな要素を取り入れている。ハードコアの男くさく熱いシンガロング、不吉な空気を紡ぐスラッシュメタルなメロディーなリフ、MERAUDER(メラウダー)のような暴力的でパワフルに刻むリフ、苛立ちを激しいスピードと衝動にのせるブラストビート、メロディック・デスメタルの叙情的なメロディー。ハードコアの衝動的な勢いと、快感で常習性のある叙情的なスラッシュメタルのメロディーなど、熱くカッコよく爽快な気分になれるフレーズとリフのうまみだけをすくいとったサウンドなのだ。

 

アルバムタイトルは、Bad Brains(バッド・ブレインズ)が掲げたと正反対の意味を持つネガティブ・メンタル・アティテュード。否定的精神姿勢とは、最先端を追求せず、後ろ向きな、保守、否定、消極的といった音楽姿勢を保つことによって、失われてしまったメタルやハードコアの原点の魅力を再確認するような、意味が込められているようにも思えた。保守的精神だが、汗をまき散らすほど情熱に満ちた品なのだ。

MILLENCOLIN(ミレンコリン)
『S.O.S』

じつに4年ぶりとなる9作目。スウェーデン・メロディック・パンクの第一人者。結成27年になるベテランだが、これまた熱くモチベーションの高い作品と活動を継続している。

 

彼らの個性とは、まるでドラマ『ふぞろいの林檎たち』のように、その年代特有の悩みや苦悩や成長などを、リアルに、赤裸々に、吐露しているところにある。Pennybridge Pioneers(ペニーブリッジ・パイオニアズ)以降、GREEN DAY(グリーンディ)やBLINK 182(ブリンク182)直系のメロディック・パンク・サウンドをベースにしながらも、08年作のMachine 15(マシーン15)ではJIMMY EAT WORLD(ジミー・イート・ワールド)のようなエモロックや、デジタルな要素を加え、True brew(トゥルー・ブリュー)では、悩みから吹っ切れたようなカラッとした明るいメロディックパンク・サウンドを展開していた。

 

今作も前作に引き続きスピーディーなメロディック・パンクを展開。開き直った明るさが魅力だった前作と比べると、今作ではダークで愁いを帯びた曲が増えた。“Nothing(ナッシング)”では、夢や目標を達成したが、そこには何もなかったと歌い、“For Yesterday(フォー・イエスタデー)”では精神的ストレスを抱えている人もいたと歌っている。そこには、新しいことにチャレンジしたとしても、20代のころのように新鮮さはなく、一度経験したものばかりで、何をやっても楽しめない憂鬱さや、上司からのプレッシャーで精神的ストレスを抱えている人など、40代特有の悩みがあるのだ。それがアルバムタイトルに込められた『SOS』の意味なのだろう。

 

どこにでもいそうなシンプルなメロディック・パンクで、一見何の変哲もないサウンドだが、これだけ魂を込められた作品もそうはいない。今作も熱くモチベーションが高く喜怒哀楽にあふれた素晴らしい作品なのだ。