アルバムレビュー

Novice(ノービス)
『Sorrow & Surrender(スロウ&サレンダー)』


ミシガン州グランドラピッズ出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの2作目。このバンドもTouche Amore(トゥーシェ・アモーレ)から進化した、次世代のスクリーモ・シーンを担うバンドのひとつ。だがTouche Amore(トゥーシェ・アモーレ)よりも、エモよりで、さらにメロディックなサウンドを展開している。

前作『Novice(ノービス)』は、野太いギターと男くさい怒声ボーカルに、穏やかで美しく儚いメロディーとのコントラストが激しさのなかで脆い心の弱さが揺れ動いている作品だった。今作でもそのサウンドの延長上にある作品で、繊細で静寂なメロディーは薄れ、ギターはさらに激しさがさらに増した作品に仕上がっている。

『悲しみと降伏』と名付けられた今作では、後悔や家族の病気、静寂な祈りなど、後悔からくる悲しみといった内容の歌詞が多い。

音の空間を活かしたミニマムなギターのメロディーには、暗い陰りと悲しみを帯び、激しいギターと憤りに満ちた怒声は、何もできない無力さと深い悲しみを覆っている。

後悔という激しさと何もできない叫び、憂いと悲しみに帯びた脆弱なメロディーのコントラスト。Leatherface(レザーフェイス)やHot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)を彷彿とさせる武骨な男くささと哀愁。エモのアップダウンをさらに強調し、より激しくよりメロディック進化させたバンドなのだ。

Svaveldioxid
『Mental Skyttegrav Flexi 2023』


スウェーデンのベテラン・ハードコア・バンドの通算10作目となる2作目のシングル。Mob 47やANTI CIMEX(アンチ・サイメックス)などのスウェーデン伝統のDビートを継承し、革ジャンスタイルで、反戦、反核などの80年代の古きハードコアの良きスタイルを受け継いだバンド。

焦燥感をかきたてるDビートを中心に、音の塊のようなノイズギターと、音の悪いエフェクトがかかりまくったボーカルが、絶叫する展開。イギリスのDischarge(ディスチャージ)が進化した、引き締まったタイトな音と暴力性にあふれた、スウェーデン・ハードコアの伝統と個性のあるサウンド。

“戦争に犯されて”や“精神的な塹壕”などの歌詞からは、PTSDや戦争神経症をイメージさせる内容で、ハードコアの音の恐怖から戦争の悲惨さが伝わってくる。

イギリス直系の典型的な時代錯誤なオールド・スクール・ハードコアだが、後世に伝えなければいけないハードコアの魅力を伝える素晴らしい作品だ。

Dreamwell(ドリームウェル)
『In My Saddest Dreams, I Am Beside You(イン・マイ・サディスト・ドリームス,アイ・アム・ビサイド・ユー)』

ロードアイランド州プロビデンス出身の、新世代スクリーモ・バンドの2作目。これが新世代スクリーモの最先端を行く作品に仕上げっている。TOUCHE AMORE(トゥーシェ・アモーレ)の手によって、skramz(スクラムズ)と呼ばれていたころのスクリーモが新しく蘇った昨今、新世代のバンドたちによって、新たなスクリーモ・シーンが活気を増している。

Dreamwell(ドリームウェル)は、まさに新世代のスクリーモを代表するバンドで、TOUCHE AMORE(トゥーシェ・アモーレ)より激しく繊細で、ドラマティックで完成度の高いメロディーが彼らの特徴だ。スクリーモとポストハードコアとメタルコアの融合という書き方をすると、陳腐なサウンドのように聞こえてしまうが、いままでのバンドなかったメリハリがすごい。

繊細でデリケートにソフィスケートされたメロディー。そこに嘆きのスクリームとメタルコアの激しいギターが重なり合う、弱さや脆さとを怒髪天を衝くような激しさが同居したアンビバレンスな展開。極端なまでのメリハリがすごい。

今作では前作以上に、絶叫度と激しさの増した作品に仕上がっている。とくにメタルコア・ギターの激しさが増している。まるで業火のような苛烈な怒りと激しさで、つもりに積もった憤懣と鬱積を、優しくドラマティックなメロディーが急速に洗い流すような展開。

日本語で『悲しい夢の中で、私はあなたの隣にいる』という意味の今作では、破綻した精神世界と苦しみに満ちた内容が多い。<記憶に小さな亀裂が入った。頭の中の穴から命を吸い取ってください。>や<私は吊られた死体でいっぱいの空に意味を探しています>といった歌詞からは、まるで若きウエルテルの悩みのような、純粋さと手つかずの無垢な苦しみや疲れ果てた死への憧憬がある。

個人的には今年発表された作品のなかでベスト1。新世代スクリーモの最高傑作で、近代ヘヴィネスを合わせても、おそらく今年のベスト10には入ってくる、素晴らしい作品だ。