アルバムレビュー

No Exceptions(ノー・エクセプション)
『THE LINE IS DRAWN(ザ・ライン・イズ・ドレイン)』

フィンランド出身のストレーエッジ・バンドのデビューEP。ボストン・ストレートエッジ・ハードコアの創始者であるSSDから、現在のボストン・ストレートエッジ・ハードコア・シーンを代表するバンドであるNo Tolerance(ノー・トレランス)までを網羅し、ニュージャージーのユースクルー・リバイバルのFloorpunch(フロアーパンチ)や、オハイオ州クリーヴランドのストレートエッジ・バンドのConfront(コンフロント)などの要素を融合したハイブリッドなストレートエッジ・ハードコア。

ヨーロッパのストレートエッジ・バンドからの影響がないアメリカンスタイルのストレートエッジ・ハードコアで、煽情的な分厚い壁のようなギター、ドスの効いた低い声の迫力ある怒声ヴォーカル、苛立ちを表現したような激しいリズムのドラム、1分弱のファストな曲展開で、SSDのような激しく闘争的なストレートエッジ・ハードコア。

歌詞は「NO TOLERANCE(寛容はない)」では<寛容など許さない、お前は自由になれるのに 奴隷になることを選んだ>と歌い、「JUDGED(裁かれる)」では<クソ野郎、多くの人生を台無しにした。責任も取らず、臆病者のように隠れている>と歌い、「PULLED OVER(停車させられた)」では<毛皮を着て、まるで原始人のように振る舞う女たち>と歌っている。

そこには、アルコールやドラッグだけでなく、肉などの動物性食品と、毛皮などの動物由来の製品の着用も否定したヴィーガン・ストレートエッジ・ハードコア思想がある。しかもSSDばりの、アルコールやドラッグを飲む奴らや、動物性食品を食べ、動物性製品を着る奴らに暴力的行動に出るなど、かなり過激な思想を掲げている。

サウンドこそシンプルでクラシックなハードコアだが、ストレートエッジが暴力的だった時代の恐怖を現代に甦らせたバンドなのだ。

Hindsight(ハインドサイト)
『Demo ’24』

ニュージャージー州とペンシルベニア州、デラウェア州のメンバーによって結成されたストレートエッジ・バンドのデビューデモ。

Lifetime(ライフタイム)やTurning Point(ターニング・ポイント)の意志を継ぐストレートエッジ。そこにSiege(シージ)などのファストコアの要素を加えた80年代のクラシックなハードコア。

ドスの効いた迫力ある怒声、広範囲に燃え広がるようなノイジーなギター、スローテンポからハイスピードと変わっていく曲展開。古典的なハードコアでオリジナルティこそ希薄だが、尋常でない迫力がHindsight(ハインドサイト)の魅力。

「Dying To Say(言いたいことが山ほどある)」では、<お前のクソみたいな目に全てが見える>と歌い、「At Peace(平和)」では、<たださよならにしてほしい、 そうすれば心が安らぐ>と歌い、「Something To Hide(隠すべきもの)」では<君の言葉は信じられない、全てをあきらめ、自分自身をあきらめた >と歌っている。アルコールやドラッグにおぼれた友人に対して、失望と怒りに満ちた態度で接している堕落した仲間を軽蔑するほど、嫌悪と憎悪の感情でドラッグやアルコールを断固拒否している。

彼らの熱さの正体とは、自分自身を奮い立たせるような熱さではなく、軽蔑を持って他者を非難する闘争的なストレートエッジ。まさにLifetime(ライフタイム)やTurning Point(ターニング・ポイント)のストレーエッジをブラッシュアップさせたバンドなのだ。

Face The Pain(フェイス・ザ・ペイン)
『2024 Demo』

Never Ending Game(ネバー・エンディング・ゲーム)のDerrick Daniels、Wreckage(ラッケージ)のMarty Logarius、Magnitude(マグニチュード)のMatt Kalbaugh、Trapped Under Ice(トラップ・アンダー・アイス)のBrad Hyraなど、アメリカ・ハードコア界を代表する豪華メンバーが集まった、ユースクルー・リバイバル・バンドのデビューデモ。

ここではTrapped Under Ice(トラップ・アンダー・アイス)のようなグルーヴィーなハードコアや、Never Ending Game(ネバー・エンディング・ゲーム)のようなメタリックなリフと治安の悪さがにじみ出たやさぐれたハードコアではなく、MINDSET(マインドセット)を彷彿とさせる00年以降のユースクルー・ハードコアを展開。

シンプルで分厚いギター、スローテンポからピッチアップしていく鼓動の高まりを表現し駆け抜けていくハイテンションのドラム、男くさいOiコーラス、汗しぶきが飛ぶようなスポーティーな激しさと熱血漢を感じるユースクルー・サウンド。

歌詞は、「Face The Pain(痛みに立ち向かう)」では<逃げない隠れない>と歌い、「Wrong Idea(間違った考え)」では、<君と僕は同じじゃない、君の言うことは一言も信じない>と歌い、「Draw The Line(線を引く)」では<君から離れる>と歌っている。

そこにはドラッグやアルコールにあふれた環境から離れるという固い決意に満ちている。のストレートエッジを貫くユースクルーらしいポジティブな歌詞が魅力だ。自分の信念を貫く固い決意と熱意に満ちたサウンド。過去のユースクール・バンドと比べても、これほど熱いバンドはいない。そういった部分では確実にユースクルーをブラッシュアップさせ、進化させたサウンドなのだ。