アルバムレビュー

New World Man(ニュー・ワールド・マン)
『The Beast Is Back(ザ・ビースト・イズ・バック)』

ニューヨーク州ハドソンバレー出身の、マスコア・バンドの2作目のEP。Pain of TruthとLife’s Questionのヴォーカル、リッジ・ライン、Regulateのギター、マイケル・ボッティ、Invokeのベース、ジェイバード、Invokeのドラム、ヒース・ロギオヴィーノによる豪華メンバーで、クロスオーバー・スラッシュから、ニューヨーク・ハードコア、スラッシュ・メタルにプログレなどをぶち込み、カオティックにシェイクしたサウンド。アラビアンなメロディー、プログレのリフ、ファンクやハードロックのギターなどが万華鏡のように目まぐるしくフレーズが入れ替わる壮絶テクニックのバンド。

『野獣が帰ってきた』というタイトルで、「殺人の世界に閉じ込められて」や「正義の殺人開始」など、ターミネーターのような近未来の世界を歌っている。フランク・ザッパのような80年代のノスタルジックで技巧的なプログレを、現代のマスコアと融合したハイブリットなサウンド。かなり個性的で素晴らしい。

Mutant Strain(ミュータント・ストレイン)
『Murder of Crows (マーダー・オブ・クローズ)』

ノースカロライナ州シャーロット出身のノイズ系ファスコア・バンドの2作目。ファストで荒々しくノイジーなハードコア・パンクを中心に、ハイテンションでヒステリックな金切り声の女性ボーカル、2ビートでハイスピードに駆け抜けていくドラム、ノイジーなギターが雪崩のように混然一体となって襲い掛かってくる展開。

アルバムタイトルは『カラスの殺人』という身で、 “Don’t Care Don’t Know(それについては知らないし、気にもならない)”の歌詞からは、人を突き放したようなアウトロ―で孤高な世界観を表現している。

触れるものすべてを傷つけ苛立ちを吐き捨てるような、やさぐれた孤高のノイズハードコア。ハードコアの攻撃性の魅力がぎっしり詰まった作品。

Mil-Spec(ミル-スペック)
『Marathon(マラソン)』

カナダはトロント出身のメロディック・ハードコア・バンドの2作目。初期のころは熱いハードコアだったが、メロディック・ハードコアの路線を確立した18年発表のEP『Changes(チャンジズ)』以降、Touche Amore(トゥーシェ・アモーレ)のような歌い方で、荒々しくメロディックなハードコアを展開してきた。

よりメロディックに研磨された今作では、心のナイーブで脆弱な部分を表現した、人生の喪失をテーマした作品に仕上がっている。泣きじゃくるような激しさのボーカル、物思いにふける憂愁さと暗い陰りのあるメロディー、激しさと憂鬱さとのコントラストがあるサウンド。長く険しい道のりになるだろう >と歌った“Too Long At The Fair(フェアーで長すぎた)”や<古い世界に暗い日々が続く、新しいものが生まれようともがくとき>と歌った“Memento(過去の出来事を思い出させるもの)”の歌詞からは、挑み続ける情熱と敗北するルーザーのような熱さと憂鬱な切なさが漂っている。

Leatherface(レザーフェイス)から、しゃがれ声と素朴さを取り、よりメランコリックに仕立てたメロディック・パンク。Touche Amore(トゥーシェ・アモーレ)のメロディーと激しさと融合した古きよきものと新しさを融合した最先端のメロディックパンク。メランコリックで独特なメロディーには、今年話題のバンドになりそうな才能を感じる。メロディックパンクで個人的には今年のベスト3入る作品。