Straight Edgeストレートエッジ・シーンについて

 
BACK TO DC : BUILDING TOMORROW…約30年ぶりにワシントンDCで誕生したストレートエッジ・バンド、MINDSET(マインドセット)について紹介。D.I.Yでベジタリアン。自分たちでツアーをブッキングし、Tシャツを作り、フェアトレードを無視する大企業の商品は使わないと、徹底した姿勢を貫いている。

 
と、以上のように、ストレート・エッジ史の重大な出来事のほとんどを紹介している。イアン・マッケイの何気ない一言で始まったストレートエッジも、ベジタリアンから、アニマルライツ、天然由来の穀物しか食べないヴィーガンまでと、30年という時間を経るなかで、時には過激に、拡大解釈が進んだ。とくにソルトレークシティーでの事件は、正しいと信じて行動したものが、社会的な悪へと転換する出来事だったし、シーシェパードのような拳銃で発砲し船を沈没させる行為は、もはやテロとかわらないだろう。何にしても行き過ぎはよくないのだ。
 
いままでストレートエッジを遵守するひとは、長生きをするための健康志向なのか、それとも不良のすることを嫌う真面目な人間という捉えかたをしていた。だがこの本を読んで酒やドラッグのせいで家族が崩壊し、心の底からドラッグを憎んでいるストレートエッジ・バンドがいることを知り、あらためて日本とは違う価値観の違いや、アメリカ社会との治安の違いなどを思い知らされた。さらにはユースクルーという一過性のムーブメントが過ぎ去り、ストレートエッジを辞めていくバンドが意外にも多いことや、酒やクスリまで手を出すニセ・エッジ・バンドもいることにびっくりさせられた。定義がはっきりしている思想だけに、その考えを10年、20年のその遵守するのは困難だといえるだろう。それほど人は弱い生き物なのだ。
 
個人的にこの本で一番面白かった部分は、日本であまり知られていないバンドでも、それぞれに異なるバックボーンやストーリーを持っているということ。バンドでなにを伝えたいのか、歌詞の深い内容などを知ることによって、いままでと違った音楽のように聴こえてくる。この本を読むことによって、ストレートエッジの新たな魅力を知ることができた。
 
ストレート・エッジとは精神性を主とする考えなので、サウンド的な特徴が捉えづらいシーンでもある。だが映画『ザ・コープ』やシーシェパード、ベジタリアンなど、日本人に対して間接的ではあるが、広く知られている思想も珍しいといえるだろう。個人的には、イギリスのアナーコ・パンクのCONFLICT(コンフリクト)やEbullition Records(エボリューション・レコーズ)について、触れてほしかった部分が不満だが、ストレートエッジのいろいろな部分が知れ、個人的に楽しめた。価値のある本だ。