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TOTAL FUCKING DESTRUCTION (トータル・ファッキング・ディストラクション)
Rich Hoak(リッチ・ホーク) インタビュー

TOTAL FUCKING DESTRUCTION (トータル・ファッキング・ディストラクション)が8年ぶりに通算4作目となる新作『#usa4tfd』を発表した。2014年解散したBRUTAL TRUTH(ブルータル・トゥルース)のドラムであるRich Hoak(リッチ・ホーク)が中心となって結成されたバンドで、グラインド・コアにプリミティヴなパンク/ハードコアを加えたサウンドを展開している。グラインド・コアにドゥームやフリージャズ、ノイズなどの要素を取り入れたブルータル・トゥルースとは違い、扇情的で外へ向かって攻撃的でシンプルなサウンドが特徴なのだ。ブルータル・トゥルースとは異なる方向性のグラインド・コアを追求しているバンドなのだ。今作では前作以上に尋常でないテンションと破壊力のある作品に仕上がっている。インタビューでは、グラインド・コア・シーンに対するこだわりから、ブルータル・トゥルースを解散した理由、トータル・ファッキング・ディストラクションの活動を続けた理由など、話を訊いてみた。

———フルアルバムとしてはじつに8年ぶり、2015年にスプリットを発売して以来の作品です。アルバムを発表するのに、これだけ時間がかかった理由を教えてください?

Rich Hoak(リッチ・ホーク):日々の生活に追われて活動できなかったのが原因かな。最初の2年間は元気だったんだ。俺には2人の子供がいてね。俺の兄弟の人生最後を面倒見てたんだ。現在、母は94歳で日々の介護に追われている。トータル・ファッキング・ディストラクション自体も困難な問題を抱えていて、訴訟に発展したけど、結局敗訴してしまったんだ。世界の終わりに生きることは難しいよ。

———2014年にBRUTAL TRUTH(ブルータル・トゥルース)は解散しました。『END TIME(エンド・タイム)』は完成度が高いアルバムで、満足がいく内容だったから解散したという噂があります。ブルータル・トゥルースを解散した理由は、音楽への情熱が燃え尽きたからなのでしょうか?

リッチ・ホーク:俺たちはいままで頭で描いた音楽を実現するため日々懸命に努力してきた。その結果、目指していたエクストリーム・ミュージックが完成した。『エンド・タイム』そんな手ごたえを感じた作品だった。それはミュージカルのように美しい瞬間だ。俺たちはたくさんの音楽を聴いてアルバムを作り、ツアーするのがとても楽しかった。Danny Lilker(ダニー・リルカー)とは1993年に一緒に活動を始めて以来、とても親しい友人だった。でもブルータル・トゥルースはビジネスとして成立するのがとても難しいバンドだ。生きていくためにはたくさんのツアーをこなす必要があった。でも俺たちはもう若くない。90年代には年間250から300のライヴを演った。現在の年齢で同じ数だけライヴをこなすのは体力的に不可能だ。だから解散を決意したダニーの気持ちを最大限理解しているよ。彼とは敬意と友情をもって友人関係が続いている。

———ブルータル・トゥルースは解散しましたが、トータル・ファッキング・ディストラクションの活動を続けた理由を教えてください。

リッチ・ホーク:トータル・ファッキング・ディストラクションは、ある意味、俺の人生の全てなんだ。俺の人生で実際にあった出来事、未来へ向けたポエムなどを歌い、サウンド面ではグラインド・コアの進化の最前線を追求している。俺の人生のすべてであって、生きている証がトータル・ファッキング・ディストラクションに込められている。俺が生きている限り、トータル・ファッキング・ディストラクションの活動だけは止めることができないよ。

———ブルータル・トゥルースとトータル・ファッキング・ディストラクションの違いを教えてください。

リッチ・ホーク:ブルータル・トゥルースはパーティーみたいなものだったけど、トータル・ファッキング・ディストラクションは楽しい葬式のポエムのようなものかな。

———グラインドコアの特徴といえばガテラルボイスです。トータル・ファッキング・ディストラクションには一切がありません。ガテラルボイスを入れない理由を教えてください。

リッチ・ホーク:俺はドラマーで、ミュージシャンではないんだ。だから凝った音楽を作ることが嫌いでね。曲に関しては本能に従って作っている。脳の奥で感じた“怒り”、“直観”、“破壊”などかな。自分の感情をダイレクトに歌っているんだ。それが俺にできる唯一の方法だよ。

 

TOTAL FUCKING DESTRUCTION

「#USA4TFD」

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———ものすごい激しいテクニックの高速ドラムがトータル・ファッキング・ディストラクションの特徴です。グラインドコアのなかでもこれだけ激しいドラミングのバンドは存在しません。グランド・コアのなかでも異質ですが、どのようなドラムスタイルを目指していますか?

リッチ・ホーク:とくに深く考えて演奏していないよ。ただ本能のおもむくまままにプレイしている。みんながダンスミュージックを聴いて楽しく踊るのと一緒で、そこに特定のスタイルがあるわけじゃない。結果それがオリジナルなドラムスタイルといってもらえるなら、光栄だよ。

———シリアスだったブルータル・トゥルースと比べると、トータル・ファッキング・ディストラクションでは、Hate Mongering Pig Pandemonium(嫌悪感のある豚の大悪魔)やNihilism, Emptiness, Nothingness, Nonsense (ニヒリズム、空虚、無、ナンセンス)やGrindcore Salesman(グラインドコアセールスマン)など、ニヒリズムやアイロニカルにあふれた内容が目立ちます。どのようなアティチュードを目指しているのですか?

リッチ・ホーク:トータル・ファッキング・ディストラクションは20年以上にわたり、アンダーグランド・ミュージックシーンで、つねに新しい音楽を追求してきた。売れるか売れていないかに指標を置いていない。ときにユーモアを交え、世の中の空虚や矛盾を明らかにしている。俺たちはつねに快楽をすり潰すような不確実な精神性のなかで、日常生活のニヒリズムを生きながら、アイデアを絞り出し音楽を作っている。俺たちの歌はシリアスで、現実にあった出来事を歌っている。または生きることについて歌っている。平和こそ勝利。

———今作ではいまま発表した作品のなかで一番激しくファストなサウンドを展開しております。“Mothers’ Meat(マザーズ・ミート)”など、ドラムのテクニックがすごいです。サウンドコンセプトを教えてください。

リッチ・ホーク:自分の感覚が良いと思うものを曲にしている。今回素晴らしいメンバーとエンジニアとスタジオに恵まれたよ。Mark-It-Zero Studios(マーク・イット・ゼロ・スタジオ)の音質は最高だった。Dan o’hare(ダン・オヘア)がギターの音質とサウンド・コンセプトを決めたんだけど、まるで魔法使いのように、理想的なサウンドを選んだ。スタジオ技術の天才だよ!Ryan moll(ライアン・モル)も最高のベースを弾いた。すばらしいサウンドを作ってくれたことに、とても感謝しているよ。

———“World War 4(ワールド・ウォー4)”ではスラッシュメタルなギターなどを取り入れ、新しいことにチャレンジしております。テクニカルなギターを取り入れた理由を教えてください。

リッチ・ホーク:ダン・オヘアがギターを弾いているんだけど、彼は神だね。第四次世界大戦の歌詞の内容から、その雰囲気や臨場感をイメージしてギターを弾いたんだ。

———“Anal Trump Is Gay(アナル・トランプ・イズ・ゲイ)”では、サンディエゴのグラインドコア・バンドであるAnal Trump(アナル・トランプ)をオマージュした曲があります。『Peace, Love And Total Fucking Destruction(ピース,ラブ・アンド・トータル・ファッキング・ディストラクション)』に収録されている“Seth Putnam Is Wrong About A Lot Of Things, But Seth Putnam Is Right About You(セス・パットナムは多くのことについて間違っていたが、あなたに対して正しい態度をとってくれた)”ではAnal Cunt(アナルカント)のボーカル、Seth Putnam(セス・パットナム)について歌いました。毎作異なるグラインド・コア・バンドをトリビュートする理由を教えてください。

リッチ・ホーク:セスは親しい友人だったんだ。アナル・カントに敬意を表してオマージュしたアナル・トランプは、グラインドコア・シーンで重要なバンドだ。両バンドともグラインドコア・シーンのなかで欠かせない重要な存在なんだ。何秒というファストな曲のなかに、俺たちの時代の重要なメッセージを込められるなんて、すごいことだよ。だから両バンドに敬意を表して引き合いに出したんだ。アナル・トランプはゲイ!(アナル・トランプの曲には○○はゲイというタイトルの曲が多い__それに引っ掛けた答え)。間違いないね。

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「#USA4TFD」

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———ヴァイナルとCDでは2015年に発表されたEP 『Our Love Is A Rainbow(アワ・ラヴ・イズ・ア・レインボー)』がボーナストラックとして収録されています。『#USA4TFD』では16曲目になる“hater(ヘイター)”という曲があります。この曲は前作のアルバムタイトルと同じ名前です。なぜ前作のタイトル曲を今作に入れたのですか?

リッチ・ホーク:心の流れがこの曲を16番目に入れたんだ。前作のタイトルと同じ曲名だからって、とくに前作と分離する意味で今作に入れたわけじゃないんだ。俺にとって物語と一緒で、最初からトータル・ファッキング・ディストラクションの曲は、すべて繋がっているんだ。ほとんどの歌は感じたことをただ書きとめ、文章化し、推敲を重ねて起承転結のある物語にしていく。喜怒哀楽の順序を守った物語のようにね。曲順は俺の脳の中で考えが循環して、人生の一部や思い出が相互につながっている。総計でみると忌々しい破壊になるんだ。(トータル・ファッキング・ディストラクションになると、かけている)

———“World War 4(第四次世界大戦)”や“A Note to My Future Self(ノートに書いた未来の自分)”や“Anarchy Chaos Collapse Comedy(アナーキー、カオス、崩壊、コメディ)”では、将来戦争に発展するような悲惨な未来を予見しているように感じます。いままでニヒリズムやアイロニカル、屈折したユーモアな表現が多かったトータル・ファッキング・ディストラクションとしては、珍しくストレートな表現が目立ちます。今作のテーマを教えてください。

リッチ・ホーク:アルバムタイトルである『#USA4TFD』は、ユナイデット・ステイツ・アメリカ・For(4にかけている)トータル・ファッキング・ディストラクションを略して『#USA4TFD』なんだ。アメリカを完全に破壊するためのものという意味で、今作のテーマになっている。悲惨な現実について歌っている。あきらかに嘆かわしいものだけど、しかしそれが現実なんだ。

———このまま経済格差や貿易摩擦が進めば、将来、世界恐慌が起き、戦争に発展すると言われております。トータル・ファッキング・ディストラクションは未来を予言しているような歌詞が目立ちます。未来に対してどのような考えをお持ちですか?

リッチ・ホーク:俺たちは自分たちにしかできない方法で権力に対して、真実を訴えかけている。俺たちがアルバムで提示したデータとは、グローバル企業の軍事、エンターテイメント、テクノロジー複合体など、日常生活をめちゃくちゃにしている要因。それらがゆっくり時が流れる祝典のように、地獄の黙示録が進行している。『#USA4TFD』では、クレイジーな生活を送っているすべての人々に、エネルギーと力を与えるメッセージが込められているんだ。すべての人々は未来に向かって生きているから。希望こそすべて、心からそう思うよ!

———最後にグラインドコアの歴史を紹介したDVD『Slave To The Grind(スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド)』が発売されました。ナパームデスやブルータル・トゥルースなども出演しております。改めてグランドコアへのこだわりと魅力を教えてください。

リッチ・ホーク:グラインド・コアは魅力的なのか?それともペテンなのか?それはあなたが選んでほしい!トータル・ファッキング・ディストラクションはグラインド・コアを通じて、いろいろな人と出会い、そして古い友人と再会した。人生のいろいろなことを学んだんだ。輝かしい瞬間を共有した。まるで面白くも興味深げな世界の終わりのパーティーのようだよ。これが俺たちの人生だな

———質問に答えてくれてありがとうございます。最後にグライドコアファンへ一言。

リッチ・ホーク:強くラウドに。 穴蔵で会えるといいな。乾杯!日常生活でゆっくり時間をかけて、信義について考えてください……世界の終わりに生きる!!!!

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「#USA4TFD」

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