アルバムレビュー

Skourge(スカージー)
Torrential Torment (トレンシャル・トーメント)

テキサス州ヒューストン出身のクロスオーバー・リバイバル・バンドのデビューアルバム。かなりエフェクトがかかった録音状態に、スピーディーなオールドスクール・ハードコアを中心に、Cro-Mags(クロマグス)やMotörhead(モータヘッド)系のギターのリフを融合。ハスキーで艶やかな怒声、音圧のあるノイズギター、疾走するドラムが絡んでいく展開。
日本語で『激しい苦痛』という意味の本作では、農民の反乱、鞭打ち、自由は否定された、神聖なものは何もないなど、中世のような地主から搾取される、不吉な田舎の風習に満ちた世界を歌っている。

中世のようなドロドロし、機械のように無機質で寒々としたサウンド。Motörhead(モータヘッド)やスラッシュメタルとニューヨークのクロスオーバー・スラッシュが混ざり、いままでありそうでなかったサウンド。

PURE TERROR(ピュア・テラー)
BLOOD OATH (ブラッド・オース)

レバノン、パレスチナ、シリア出身のメンバーで構成される、ニューヨークを拠点とするアラブ系ハードコア・バンドのデビュー作。メンバーたちが生きている間に、パレスチナが自由になることを願って活動しているバンド。

録音状態の悪いノイズ系UKハードコアだが、扇情的なサウンドと勢いがすごい。爆撃機のようなノイズギターから、性急なスピードで駆け抜けていくドラム、甲高い声の被害者意識と怒りが入り混じったヴォーカルなど、サウンドは典型的なDischarge(ディスチャージ)系ハードコア。

「١. ثوري ثوري (反逆者、反逆者)」では、1987 年のシリアのカセット・アーカイブから革命の歌のサンプルを導入し、「الشعب يريد」と「إسقاط النظام」(人民は政権打倒を望んでいる)では、2011 年にちゅじじあ共和国の首都、チュニスで使用された抗議のチャントを導入している。また「٦.مضادّ كل حكومات (すべての政府に対して) 」ではガッサン・カナファニのインタビューと、1970 年のレバノンの首都ベイルートで市民が合掌したサンプルを取り入れている。

サウンド的には中東的な要素を取り入れていないのが残念なところではあるが、中東の自由と平等を求めたポリティカルな思想のアナーコ・パンク・バンドなのだ。

Rabbit(ラビット)
BARDO(バルド)

ニューヨークはブルックリン出身の2作目のEP。パーワーバイオレンスを中心に、デスメタルやブラックメタル、マスコアが渦巻き、カオティック・パワーバイオレンスとでも呼ぶべきサウンドを展開している。

パワーバイオレンスの激しいサウンドに、サイケデリック・ギターを取り入れ、魔界の世界観のサウンドを展開している。

歌詞はアンチ司祭がバフォメット(悪魔)するなど、サタニズムや仏教の神、尻尾をふる犬など無意味なテーマについてい歌っている。

悪意と腐臭に満ちた邪悪なパワーバイオレンス。Nailsのノイズコアにパワーバイオレンスやサタニック、サイケデリックを取り入れたさらに進化させたハードコアの最前線にいるサウンド。かなり不快さ追求した邪悪な音で素晴らしい。