アルバムレビュー

Days Spent(デイズ・スペント)
『Grieve/Thrive(グリーヴ/スライヴ)』

フロリダ出身のニュースクール・ハードコアバンドの3作目のEP。MADBALL(マッドボール)をさらに激しくしたようなハードコアで、息が詰まるほどシリアスな雰囲気が特徴のバンド。

MADBALL(マッドボール)の特徴であるビートダウンしたサウンドを、さらにノイジーに重く仕立て、そこにヒステリックな怒声の女性ボーカルがニューヨーク・ハードコア特有の歌い回しで、怒りや惨めさ苦痛や不安といった感情を紡いでいく。

日本語で『深く悲しむ/力強くなる』という意味の今作では、フェミニズムや詐欺師、パワーハラスメントなどについて歌っている。“Remain(リメイン)“では、中絶に抗議する特権階級の白人男性について怒り、“Best Wishes(ベスト・ウィッシュ)”では、自分の利益のために虚偽の話を広める人物を咎めている。また“Jade’s Song(ジェイドズ・ソング)”では、友人を守るため、社交界での虐待行為を止めるよう呼びかけている。そこには権力者への反発や弱者の怒りに満ちている。

新しく取り入れたシリアスな歌い方や、ブレイクダウンや警告音のようなフレーズを取り入れたギター・サウンドと相まって、さらに深化した作品に仕上がっている。

歌詞もサウンドも深みが増し、ブラッシュアップされ、成長の兆しが見える。MADBALL(マッドボール)のサウンドをベースに、深化させ、オリジナリティを獲得した作品なのだ。

Nuclae(ニュークレ)
『Bringing Out The Beast(ブリニング・アウト・ザ・ビースト)』

元Integrity(インテグリティ)のギタリストにして、SF作家であるAaron Melnick(アーロン・メルニック)によって結成され、自らのサウンドをSFシュケイザー・ヘヴィー・ハードコアと名付けられたバンドのデビュー作。これがかなり実験的なサウンド追及している。

バンド名のNuclae(ニュークレ)とは、遺伝子編集された人々という意味で、例えるならジョジョの奇妙な冒険の第二部に登場するカーズのように、DNAを自在に編集できる人間のことを指している。

そのサウンドは、ハードコアの野太いギターから、GISM(ギズム)のような日本のハードコア、クラッシクメタル、音をミニマムに絞ったアコースティック・ギター、ゴズ、ノイズなどが融合したインストゥルメンタル。ランディ―内田からの影響が強いヘヴィーなギター・サウンドと、不吉な寂寥感に満ちたアコースティックが、行き来するサウンドで、抑制の効いた歌声で、あきらめや気だるさ、絶望や孤独などのダウナーな感情に満ちている。

地獄の底で鳴っているような気が滅入るような重苦しギターサウンド、そこに悪魔が召喚するようなギターソロが、神秘的な美しさを放っている。重苦しいヘヴィーなギターサウンドと、ミニマムで不吉な寂寥感のアコースティック、ダウナーな感情にまとめられた激しさと静けさが行き来するサウンド。Nuclae(ニュークレ)にしかない独特な個性を放っている作品なのだ。

No Cure(ノー・キュア)
『The Commitment To Permanence(ザ・コミットメント・トゥ・パーマネンス)』

アラバマ州バーミンガム出身のメタリック・ハードコア・バンドの3作目のEP。EARTH CRISIS(アース・クライシス)のヴィーガン・ストレートエッジ思想とメタリック・ハードコア・サウンドから、多大に影響を受けたバンドで、さらに激しさを増したサウンドと、ストレートエッジのストイシズムを突き詰めたのが、No Cure(ノー・キュア)の特徴なのだ。

EARTH CRISIS(アース・クライシス)のメタリック・ハードコアをさらに激ししたサウンドで、ミディアムテンポの曲を中心に、ブルータル・デスメタルの要素やブラストビートなどを加え、さらに過激に激しく進化している。

音の壁のようなに重く激しくダウンチューニングされたギター、ブラストビートへとリズムが変化していくドラム、暴力的な低音を叩きつけるベース、叫び声の要素を含んだ怒声。そこには酒やドラッグに溺れ、自制心を失ったものへの醜態やおぞましさと、怒りに満ちている。

歌詞は、飲酒運転で事故を起こし周りに迷惑をかける者への、怒り、壊死、腐った内臓などの描写が印象的だ。ブルータル・デスメタルのホラーやスプラッター、残酷描写と、ヴィーガン・ストレートエッジの反飲酒、反ドラッグが結びついた歌詞。そこには、飲酒やドラッグなどの恐怖をかきたて、反ドラッグ、反飲酒であることによって、長生きすることや健康であることのすばらしさを説いている。

まさにEARTH CRISIS(アース・クライシス)のメタリック・ハードコアとヴィーガン・ストレートエッジの進化の最前線にいるバンドで、サウンド的にも思想的にも、ブルータルデスメタル・ヴィーガン・ストレートエッジと名付けたくなるほど、彼らならではの個性を持っている