アルバムレビュー

Dizdain(ディスデイン)
『I’ll Never Get Out Of This World Alive(アイル・ネヴァー・ゲット・アウト・オブ・ディス・ワールド・アライブ)』

オーストラリアはメルボルン出身の90sハードコア・バンドの1st EP。Cold As Life(コールド・アズ・ライフ)やH8 inc.、Everybody Gets Hurt(エヴリバディ・ゲッツ・ハート)に影響を受け活動を始め、Cold As Life(コールド・アズ・ライフ)を激しくノイジーにパワーアップさせたサウンドを展開している。

重くノイジーで90年代を彷彿とさせるグルーヴィーなハードコア・ギター、修羅場をくぐってきた人間が放てる怒声のヴォーカル。

タイトルは「この世から生きて出られるはずがない」という意味を持ち、歌詞は、「私は生きてこの世界から出られないだろう」や「もし明日が来ないなら」「お前が背負う十字架」「祈りは叶わず」といったフレーズが並ぶ。明日は生き抜くことができるのかという緊迫感、罪を背負った人生を描き出す、貧困という殺伐とした感情が生み出したやさぐれたハードコアだ。

感情的に弱い部分をさらけ出すことに重点が置いた作品であり、他者に利用されていると感じるフラストレーション、愛する人を失った悲しみ、個人的な葛藤、努力を要する単調な毎日などがテーマが込められている。

同郷のSpeed(スピード)と同じく、虐げられた人たちが感じる抑えきれない怒りと抗い続ける叫びを歌ったハードコア。悲惨さと怒りに満ち溢れた作品なのだ。

Miserere(ミゼレーレ)
『Quiebra todo(キエブラ・トード)』

アルゼンチン・ブエノスアイレス出身のビートダウン・ハードコア・バンドによる、2024年発表のデビューアルバム。Bulldoze(ブルドーズ)直系のミドルテンポ・ビートダウン・ハードコアに、2ビートの初期UKハードコアのフレーズ、不快なノイズで歪みきったギター、スペイン語でヒステリックな怒りをぶちまける女性ヴォーカルの金切り声、ノイジーでブンブンとうねるベースを加え、ローカルな進化を遂げている。

歌詞は、「Rata(平均)」では「お前はただの惨めな悪党、あれほど文句を言っていた連中、軽蔑していると主張していた連中の一人だった」と歌い、「Desidia(不注意)」では「絶望の屈辱、溢れ出る憎悪」と吐き出す。そこには常軌を逸するほどの悪口と憎悪が満ちあふれ、怒りのエナジーが巨大な雪だるまのように膨れ上がり、音の塊となって襲いかかってくる。

ビートダウン・ハードコアの中でも悪口に特化したタフガイ・コアでありながら、同時に不快なほどノイジーで実験的。独自の進化を遂げたサウンドを展開するバンドである。

ビートダウン・ハードコアのなかでも悪口に特化したタフガイ・コア。だがビートダウン・ハードコアのなかでも不快なほどノイジーで実験的で、かなり独特な進化を遂げているサウンドのバンドでもある。

Sicario Beatdown(シカリオ・ビートダウン)
『Relentless(リレントレス)』

Cold Hard Truth(コールド・ハード・トゥルース)、6Weapons(6ウエポンズ)、TRC、50 Caliber(50キャリバー)、Violetta Villas(ヴィオレッタ・ヴィラ)、Bun Dem Out(バン・デム・アウト)、Maldito(マルディタ)といったバンドのメンバーが所属する、ロンドン出身のビートダウン・ハードコアバンドによる2021年発表の1st EP。

これらのバンドを掛け合わせたようなサウンドで、スピーディーなハードコアからミドルテンポのビートダウン・ハードコアまで自在に切り替わる迫力が魅力となっている。

氷のように冷たく薄情な、重くノイジーなギター。心を追い詰めるように冷酷に沈み込むビートダウン。パトカーのサイレンの緊張感、人を追い詰めるような迫力のデスヴォイス。犯罪と暴力の匂いを漂わせる極悪なサウンドが全体を支配する。

バンド名「殺し屋のビートダウン」や、「容赦ないビートダウン」「無条件の憎悪」「裏切者」といった歌詞からは、裏切り者を容赦なく葬るマフィアの世界観が浮かび上がる。

本作は、ビートダウン・ハードコアの中でも特に犯罪や暴力と結びついたバイオレンスを強調しており、イギリスの犯罪組織の闇を音楽で表現した作品と言える。