Rated X(レイテッドX)
『United Front(ユナイテッド・フロント)【LP】』

イギリス出身のストレートエッジ・ハードコア・バンドのデビュー作。イギリスのバンドだが、The Abused(ジ・アビュース)や Straight Ahead(ストレイト・アヘッド)、 Ripcord(リップコード)にProject X(プロジェクトX)、YOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)など、メタル色が一切ないニューヨーク・ハードコアからの影響が強いバンドだ。

 

『Demo19(デモ19)』を経て発表された今作では、サウンドのベースとなっているニューヨーク・ハードコアからの影響という部分では変わりはないが、ストップ&ゴーや、テクニカルなメタルギターのソロなどを一部に取り入れ、男くさくも気合とユーモアにあふれたハードコアを展開している。

 

ストレーエッジと左翼とポリティカルを信念に掲げているバンドだが、歌詞は反核から、戦争反対、反保守、サッカーのことなど、自分たちが心に思った感情を率直に歌ったといった内容が目立つ。“Rather Walk Alone”はイングランド・プレミアリーグのサッカーチーム、エバートンについて。どんなに弱いチームでも見捨てず応援し続ける、エバートンに対する愛着について歌っている。“You’re Next”では、ギャモンと呼ばれる中年の保守層の白人について。ギャモンが、LGBTQとギャングを恐れ、菜食主義者と憎み、All Lives Matter(黒人だけではなく全ての命が重要だろ!)を支持し、難民が仕事を奪っていると考えていると訴え、彼らの行動と思考の全てを否定している。

 

イギリスのOiパンクの精神的な要素も取り入れつつも、自分が信じた正しいと思うことを衝動の赴くままに活動している。まるで寅さんのような人情深さがある。打算を感じることのない人間味が素晴らしいバンドなのだ。

Year Of The Knife (イアー・オブ・ザ・ナイフ)
『Internal Incarceration (インターナル・インカーサレーション)』

デラウェア州出身のメタリック・ハードコア・バンドの20年に発表された2作目。アメリカではメタリック・ハードコアと紹介され、ニュースクール・ハードコア(90年代ハードコア)の、進化系といえるサウンドを展開しているバンドなのだ。

 

デビュー作の『Ultimate Aggression(アルティメット・アグレッション)』は、Earth Crisis(アース・クライシス)のミディアム・テンポのサウンド・スタイルに、メタリックなギターフレーズを付け加え、ブルータル度とヘヴィネス、テクニカルな要素を加えニュースクール・ハードコアをさらに進化させたサウンドだった。

 

今作ではギターこそシンプルになったが、その分ブルータルな側面を追求した、へーヴィーでダークで迫力あるサウンドに仕上がっている。Nails(ネイルズ)などに通じるノイジーなハードコア。衝動や情感よりもテクニカルな技巧を重視していたメタル・ギターは、よりノイジーに、よりヘヴィーに変貌を遂げ、アグレッシヴさが増している。ハンマーを振り下ろすようなギターのリフ、ドメスティックな暴力が渦巻いているブラストビート、阿鼻叫喚な絶叫。そのサウンドにはブルータルでどろどろとした感情が渦巻いている。

 

そのどろどろとした感情とは陰鬱な内面世界。今作では心が病んでいるような精神病的な内容の歌詞が多い。 “Virtual Narcotic(仮想麻酔薬)”では、<私は精神病に侵されたと感じる。彼らは私の内面を死に至らしめた>と、精神的に病んだ心の中を歌い、“Final Tears(最後の涙)”では、<私の心の中にある牢獄から、どうすれば抜け出すことができるのか?>と、葛藤や悩みから抜け出せない殻にこもった心の中を歌っている。

 

また“Internal Incarceration(内部収容)”では、<成長しないそれは自分自身のせい。痛いほど存在する自分の内なる監禁の中に>と、殻を破れず精神的な成長できないことを歌い、“Manipulation Artist(操作されたアーティスト)”では、<いままで共感をあたえるために~コントロールされてきた。腐った心の魅力>と、本当の自分を偽り、ファンが求める偶像を演じているアーティストについて歌っている。

 

“Premonitions of You(あなたの予感)”は、<どこで走っても自分を殺す~内面からの問題を解決しなければ~私は死にたい>と自己嫌悪に陥り鬱になっている内面について。“Sick Statistic(病気の統計)”は、<悪魔化。私は再びそれをやった。私が破るこの約束。死の輪。 運命の輪。~私の魂を奪われた。私を直してくれ>と、破滅へ向かっていく心の動きについて歌っている。

 

この作品で歌われているのは、疎外や自閉、幻覚や妄想、パブリック・イメージと本心の葛藤など、多種多様に及ぶ心理的な問題。内面世界に押さえつけられ、塞ぎ込み、抜け出すことのできない煩悶と苦悩。苦痛の叫びのような絶叫とプレス機に押しつぶされるような重いギターのリフからは、精神的に病んだ内面のダークさと狂気が滲みでている。アルバムジャケットに象徴されるように、ヘヴィーで重いサウンドに鬱な暗さを閉じ込めた作品なのだ。

 

ハードコアといえば、大抵のバンドが攻撃のベクトルが外の世界に向かっていて、闘争心にあふれたバンドが多い。これほど鬱な世界という内面の狂気を表現したハードコア・バンドも珍しい。そういった意味では唯一無二の個性を持ったハードコア・バンドなのだ。
珍しい精神性のバンドなのだ。

ECOSTRIKE(エコストライク)
『A Truth We Still Believe(ア・トゥルース・ウィ・スティル・ビリーブ)』

サウスフロリダ出身のヴィーガン・ストレートエッジ・バンドの2020年に発表された2作目。ストレート・エッジはおおざっぱに分けて、チャンピオンのトレーナーを着たカジュアルなファッションでベジタリアンなユース・クルー系と、アニマルライツ(動物の権利)やヴィーガンで闘争的なEarth Crisis(アース・クライシス)系の2つに分かれる。ECOSTRIKE(エコストライク)の場合、ヴィーガン・ストレートエッジに、ユースクルー的なファッションを少々加えた、内省的でストイックなアティテュードを掲げているバンドだ。

 

前作『Voice of Strength(ヴォイス・オブ・ストレングス)』では、ヒップホップとメタルをハードコアに融合したサウンドで、 Strife(ストライフ)やJudge(ジャッジ)、Buried Alive(ベリィード・アライブ)からの影響が色濃いニュー・スクール(90年代ハードコア)ハードコアを展開していた。

 

そして今作ではシンプルなオールド・スクールなハードコアを展開している。Strife(ストライフ)やJudge(ジャッジ)からの影響は相変わらず色濃いが、メロディックなメタルギターとスピーディーな勢いで、終始罵倒していく。攻撃が向かっている対象は他人ではなく自分自身。“A Truth We Still Believe(俺たちがまだ信じている事実)”と“Another Promise(別の約束)”では、たとえ裏切られても、一度親友になった友人を信じぬくと歌い、そこには友情と団結心を第一義に掲げ、頑なに貫いている姿勢がある。義理と人情に篤くハードコア・コミュニティーの団結心を大切にしているバンドなのだ。

 

サウンド的には正直、前作のほうが好きだったが、今作ではシンプルで直情的で、なにより心熱くたぎらせる<信義>という違った魅力がある。まさにハードボイルドなハードコアらしい熱さを持った作品なのだ。