じつに3年ぶりとなる9作目。96年の結成以来、動物虐待の悲惨な恐怖、人類による環境破壊、人間が工場で飼育され大量虐殺される世界など、アニマルライツや環境保全、ヴィーガン・ストレートエッジという観点で、様々なテーマを取り上げていた。
今作のタイトルは、地球を意味する
今作では昼間のホラーがサウンドコンセプトになっているそうだ。今作でもプロミングドラムのような連射ドラムを中心としたデス・メタル/ゴア・グランドなサウンドを展開している。そこにピアノやシンセや地獄のデス声、クリーボイスからギターソロ、叙情的なメロディーのギターサウンドなどを加え、地球の危機を煽るような壮大なサウンドスケープを描いている。ダークな色彩が強かった前作よりも、絶望的だが明るい色合いのメロディーを取り入れ、ボーカル、ギター、ドラムなどの個々のパーツが明確になったネイキッドなサウンドに変化している。
いままで見えなかったダークな部分が白日の光にさらされることで、より肉体的で迫力のあるサウンドに仕上がっている。裸むき出しのネイキッドなサウンドが、クリーチャーが貪り食い尽くす姿を、白日の下にさらし、おぞましさや怒りを掻き立てるサウンドに仕上げている。最後の曲“Just Another Body(ジャスト・アナザー・ボディー)”では、絶望的なトーンのピアノから、プログラミングドラム、絶叫、デス声、クリーボイスと、危機から絶望に向かっていく物語のように変化していく展開で、デスメタル/ゴアグランドの新境地を開いている。
個人的にCattle Decapitation(キャトル・デカピテイション)というバンドに惹かれる理由は、欲望を貪る人類全体への嫌悪感を、惨殺される動物や醜い生物に置き換え、比喩として人間の愚かさを歌った部分にある。サウンド的にもデスメタル/ゴアグランドのなかで、最先端のサウンドを展開しており、独特な個性を放っていて、今作も素晴らしい作品だ。
アルバムレビュー
Cattle Decapitation(キャトル・デカピテイション)
Savageheads(サベージヘッズ)
『Service to Your Country(サービス・トゥ・ユア・カントリー)』
ボストン出身のハードコア・パンク・バンドのデビュー作。GBHやThe Exploited(ジ・エクスプロイデッド)を彷彿とされる古典的なイギリスのハードコアで、尖ったギターが特徴の扇情的なサウンドを展開している。
彼らのサウンドはUK82(おそらくイギリスの82年のハードコア)と呼ばれており、アメリカでは珍しいタイプのサウンドだ。そこにはハードコア特有のデス声もなければ、重たいギターやノイジーなギターもない。若干メロディ気の帯びた扇情的なギターが挑発的に感情を煽りまくる。
歌われている内容は、政府と兵役への反発。あなたの国へ奉仕や、反逆罪で絞首刑、(戦地で)飢えるなど、戦争で実際経験するような出来事を皮肉交じりに歌っている。そこには兵役を命令する政府の支配者階級の奴らに、お前らが戦争に行って死んで来いと訴えているかのような、苛立ちに満ちた感情がある。
典型的なノスタルジーなサウンドだが、これだけ挑発的なハードコアもいまどき珍しい。
Invertebrates(インバーテブレト)
『Summer Promo 2022(サマー・プロモ2022)』
シンガポール出身のハードコア・バンドの2作目のEP。SIEGE(シージ)やAGNOSTIC FRONT(アグノスティックフロント)の影響が強いファストコアで、悪い録音状態で激しくノイジーなサウンドを展開。
今作ではリハーサルなしのわずか4時間で収録されたEPで、1作目と比べると、ボーカルの録音状態が悪く音の迫力がなくなった。だがその分演奏に間違いあっても勢いだけで突き進む作品に仕上がっている。
Discharge(ディスチャージ)の2ビート2コードのハードコアを、演奏と録音状態をさらに下手にさせ、パンク的な衝動と独特な緊張感を生み出している。
失われた幻想や笑いのシステムなど、社会をニヒルに眺めた歌詞で、投げやりでどこか厭世的な感情が全体に漂っている。
古きよきものを古き録音システムで蘇られた現代では稀有なサウンドのハードコア。アジアだけに日本に近い聴きやすさを感じる。