元Integrity(インテグリティ)のギタリストにして、SF作家であるAaron Melnick(アーロン・メルニック)によって結成され、自らのサウンドをSFシュケイザー・ヘヴィー・ハードコアと名付けられたバンドのデビュー作。これがかなり実験的なサウンド追及している。
バンド名のNuclae(ニュークレ)とは、遺伝子編集された人々という意味で、例えるならジョジョの奇妙な冒険の第二部に登場するカーズのように、DNAを自在に編集できる人間のことを指している。
そのサウンドは、ハードコアの野太いギターから、GISM(ギズム)のような日本のハードコア、クラッシクメタル、音をミニマムに絞ったアコースティック・ギター、ゴズ、ノイズなどが融合したインストゥルメンタル。ランディ―内田からの影響が強いヘヴィーなギター・サウンドと、不吉な寂寥感に満ちたアコースティックが、行き来するサウンドで、抑制の効いた歌声で、あきらめや気だるさ、絶望や孤独などのダウナーな感情に満ちている。
地獄の底で鳴っているような気が滅入るような重苦しギターサウンド、そこに悪魔が召喚するようなギターソロが、神秘的な美しさを放っている。重苦しいヘヴィーなギターサウンドと、ミニマムで不吉な寂寥感のアコースティック、ダウナーな感情にまとめられた激しさと静けさが行き来するサウンド。Nuclae(ニュークレ)にしかない独特な個性を放っている作品なのだ。
アルバムレビュー
Nuclae(ニュークレ)
No Cure(ノー・キュア)
『The Commitment To Permanence(ザ・コミットメント・トゥ・パーマネンス)』
アラバマ州バーミンガム出身のメタリック・ハードコア・バンドの3作目のEP。EARTH CRISIS(アース・クライシス)のヴィーガン・ストレートエッジ思想とメタリック・ハードコア・サウンドから、多大に影響を受けたバンドで、さらに激しさを増したサウンドと、ストレートエッジのストイシズムを突き詰めたのが、No Cure(ノー・キュア)の特徴なのだ。
EARTH CRISIS(アース・クライシス)のメタリック・ハードコアをさらに激ししたサウンドで、ミディアムテンポの曲を中心に、ブルータル・デスメタルの要素やブラストビートなどを加え、さらに過激に激しく進化している。
音の壁のようなに重く激しくダウンチューニングされたギター、ブラストビートへとリズムが変化していくドラム、暴力的な低音を叩きつけるベース、叫び声の要素を含んだ怒声。そこには酒やドラッグに溺れ、自制心を失ったものへの醜態やおぞましさと、怒りに満ちている。
歌詞は、飲酒運転で事故を起こし周りに迷惑をかける者への、怒り、壊死、腐った内臓などの描写が印象的だ。ブルータル・デスメタルのホラーやスプラッター、残酷描写と、ヴィーガン・ストレートエッジの反飲酒、反ドラッグが結びついた歌詞。そこには、飲酒やドラッグなどの恐怖をかきたて、反ドラッグ、反飲酒であることによって、長生きすることや健康であることのすばらしさを説いている。
まさにEARTH CRISIS(アース・クライシス)のメタリック・ハードコアとヴィーガン・ストレートエッジの進化の最前線にいるバンドで、サウンド的にも思想的にも、ブルータルデスメタル・ヴィーガン・ストレートエッジと名付けたくなるほど、彼らならではの個性を持っている
Novice(ノービス)
『Sorrow & Surrender(スロウ&サレンダー)』
ミシガン州グランドラピッズ出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの2作目。このバンドもTouche Amore(トゥーシェ・アモーレ)から進化した、次世代のスクリーモ・シーンを担うバンドのひとつ。だがTouche Amore(トゥーシェ・アモーレ)よりも、エモよりで、さらにメロディックなサウンドを展開している。
前作『Novice(ノービス)』は、野太いギターと男くさい怒声ボーカルに、穏やかで美しく儚いメロディーとのコントラストが激しさのなかで脆い心の弱さが揺れ動いている作品だった。今作でもそのサウンドの延長上にある作品で、繊細で静寂なメロディーは薄れ、ギターはさらに激しさがさらに増した作品に仕上がっている。
『悲しみと降伏』と名付けられた今作では、後悔や家族の病気、静寂な祈りなど、後悔からくる悲しみといった内容の歌詞が多い。
音の空間を活かしたミニマムなギターのメロディーには、暗い陰りと悲しみを帯び、激しいギターと憤りに満ちた怒声は、何もできない無力さと深い悲しみを覆っている。
後悔という激しさと何もできない叫び、憂いと悲しみに帯びた脆弱なメロディーのコントラスト。Leatherface(レザーフェイス)やHot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)を彷彿とさせる武骨な男くささと哀愁。エモのアップダウンをさらに強調し、より激しくよりメロディック進化させたバンドなのだ。