カリフォルニアはサンノゼ出身のメタリック・ハードコア・バンドのデビューEP。フューリーエッジと、All Out War(オール・アウト・ウォー)やMerauder (メラウダー)といったメタリック・ハードコアと融合させたニュースクール・ハードコアの進化系と言える作品。
地獄の底から響くような重厚でノイジーなメタルコア・リフ、G.I.S.Mを彷彿とさせる怒声ヴォーカル、恍惚とした陶酔感を帯びたフューリーエッジのギター、そして破壊的に叩き落とすビートダウン。世界の終焉を思わせる破壊力の中に、どこか酩酊した空気が漂っている。
「厄病な存在」というバンド名と、『神の失敗』というタイトルが象徴するように、「弱者には慈悲はない」「お前らの嘘、お前らの強欲、お前らの悪、お前らの力」といったフレーズを通して、人間の堕落した欲望や、神の存在を否定するサタニズム的世界観を描いている。
激烈で重苦しく、絶望を想起させるデス・メタリックなハードコアに、フューリーエッジ由来の酩酊感を融合させ、メタリック・ハードコアを新たな次元へと進化させた。Plague of Existence(プレイグ・オブ・イグジステンス)ならではのオリジナリティが光る一作である。
アルバムレビュー
Plague of Existence(プレイグ・オブ・イグジステンス)
Push Your Luck(プッシュ・ユア・ラック)
『Demo2025』
オハイオ州コロンバス出身のビートダウン・ハードコア・バンドの2作目のデモ。「614からのストレート・ビートダウン」と名乗っているバンドで、Bulldoze(ブルドーズ)直系の重くノイジーなビートダウン・ハードコア。
土石流のような重くノイジーなギターや、重さにこだわったビートダウン、地の底のうめきのようなデス声など、オーソドックスなビートダウン・ハードコアだが、そこに乾いた軽いドラムの音や、録音環境が悪い素朴な味付けをし、ガラパゴス進化を遂げたサウンドを展開している。
「欲張って調子に乗る」という意味のバンド名で、歌詞は「俺の家族の悪口を言うな」や「俺から離れろ、クソ野郎ども」など、嫌いな奴への悪口を歌っている。典型的なタフガイ・ハードコアの内容だ。
シンプルでオーソドックスなビートダウン・ハードコアだが、オハイオならではの空気が伝わってくる作品。
GRIDIRON(グリッドアイアン)
『poetry from pain(ポエトリー・フロム・ペイン)』
YEAR OF THE KNIFE(イヤー・オブ・ザ・ナイフ)、NEVER ENDING GAME(ネバー・エンディング・ゲーム)、PAYBACK(プレイバック)の元メンバーによって結成された、ビートダウン・ハードコア・バンドによる2ndアルバム。
地元ペンシルベニアのバンドKRUTCH(クラッチ)やNO RETREAT(ノー・リトリート) といったビートダウン・ハードコアのレジェンドから影響を受けつつ、ヒップホップの要素を融合させて進化したサウンドを展開。前作に比べてラップ・メタル色は控えめになり、より純度の高いビートダウン・ハードコアへと傾倒。ヘヴィネスを増した本作は、90年代東海岸を彷彿とさせるノイジーで荒々しいコード・ギターを軸に、ヒップホップのライム、シンガロング・ヴォーカル、ブラストビート、そしてビートダウン特有のグルーヴが鋭く融合。研ぎ澄まされた破壊力とハイテンションな勢いで、新世代のストリート感覚を鮮烈に提示している。
タイトルは「痛みから生まれた詩情」を意味し、歌詞には「お前らはゴキブリのように散り散りになる」「俺たちが前進すればお前は後退する——ゲームオーバー」といった、敵対者を叩き潰す挑発的なフレーズが並ぶ。
ペンシルベニア・ビートダウン・ハードコアの伝統に、ヒップホップとストリートの感性を掛け合わせた最先端のサウンド。Pain of Truth(ペイン・オブ・トゥルース)やSunami(スナミ)といった現行シーンの旗手とも呼応しながら、新世代の感覚を体現するビートダウン・ハードコア・バンドの快作。