CIRCA SURVIVE(サーカ・サヴァイブ)
『Juturna(ジュターナ)』

ジュターナジュターナ
サーカ・サヴァイヴ

HOWLING BULL 2006-10-24
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05年に発表されたデビューアルバム。基本的には前EPの延長上にある作品。アメリカのサイト、メロディック・ネットでは初期マーズ・ヴォルタとサニー・ディ・リアル・エステイトを足して2で割ったサウンドと評価されている。ものすごくおおざっぱに言ってしまえば、そうかもしれない。だがそれなりに違いもある。マーズ・ヴォルタほど曲の展開は複雑ではないし、メロディーはそれよりも美しい。なにより攻撃性をすべて排除し、強烈な被害者意識と孤独と寂寥に満ちた音楽は彼らだけのものだ。

 

今作では11曲入りとあって、アレンジのヴァラエティーが増えた。前EPと同様のピンク・フロイドから影響を受けたサイケデリックで退廃的なムードのギターから、誰からも相手にされないような寂寥に満ちたエモ系のメロディー、中期ソニックユース系の高みに昇っていくノイズギターなど、いろいろなアレンジの曲がある。とくにサイケデリックのメロディーが多い。EPよりもこったアレンジが少なく、若干シンプルになった印象を受ける。

 

歌詞は、自分のエゴを棄てることがテーマになっているようだ。普通エゴを棄てるといったら、修行僧的なストイックさを想像するが、ここでは苦しみを伴うものとして捉えている。たとえば“ウィッシュ・リサイン”では、<あなたが愛するものは長持ちしない。最初は平穏ですばらしき日々であっても、年齢を重ねるごとにそれらは失われていく。だから私たちは瞬間のすべてを否定することが必要>、と歌っている。そこにあるのは、失われてしまったものへの儚さと悲しみ。何をやっても顛末は悲惨なものでしかないという、虚無感が漂っている。すべてが受け身で、挑戦していくことや戦う姿勢といったものが拒否されている。ある意味仏教的な万物流転や因果応報といった考えかたに近いが、それをプログレの知的で難解で陰鬱な世界で表現している。

 

この受け身で被害者意識の強い軟弱なサウンドに好き嫌いが分かれると思うが、ぼくはかなり好きだ。ポップで美しいサウンドながらも暗く陰鬱な雰囲気や、聴き終えたあとに訪れる暗く落ち込んだ気分、考えても袋小路に追い詰められるような絶望感や、ダメな自分を再認識させられるような弱さがいい。情熱や闘争心よりも理性を重んじ、先のことを考えすぎて絶望や閉塞感に陥ってしまう考えかたが、ある意味、現代の若者を象徴している。いまの20代を象徴するバンドなのだ。