アルバムレビュー

PAIN OF TRUTH(ペイン・オブ・トゥルース)
『Not Through Blood(ノット・スルー・ブラッド)』

ニューヨークはロングアイランド出身のメタリック・ハードコア・バンドのデビュー作。まさにニューヨーク・ハードコアのど真ん中を行くサウンドで、MADBALL(マッド・ボール)のミディアムテンポのサウンドからAGNOSTIC FRONT(アグノスティック・フロント)のギターソロ、HATEBREED (ヘイトブリード)の金属的屈強なサウンド、INCENDIARY(インセンディアリィ)のようなパワフルなメタリック・ハードコアなど、ニューヨーク・ハードコアの伝統が凝縮されている。

重くメタリックで重厚なギターから、暗闇で厳かに静かにブンブンうねりを上げるベース、性急なスピードのドラム、ヒップホップな歌い回しと怒声が入り混じったボーカル、80年代から90年代00年代にいたるまでのニューヨーク・ハードコアの伝統を体系的に受け継いだサウンド。そこにはギャングアティテュードのような厳かで暴力に満ちた緊迫した雰囲気が漂っている。

歌詞は、<俺は家族のために戦う。お前の言葉などクソ食らえだ。>や<自分で考える。一歩下がって。頭を使え>など、そこには自分が生き抜く処世術や、家族の絆、敵対する者への攻撃など、ギャングの任侠のような世界観がある。

ゲストボーカルにMADBALL(マッドボール)のFreddy(フレディー)、TERROR(テラー)のScott Vogel(スコット・ヴォーゲル)、TRAPPED UNDER ICE(トラップド・アンダー・アイス)のJustice Tripp(ジャスティス・トリップ)、THE MOVIELIFE(ザ・ムーヴィーライフ)のVinnie Caruana (ヴィニー・カルーアナ)、MINDFORCE(マインドフォール)のJay Peta(ジェイ・ペタ)、INCENDIARY(インセンディアリィ)のBrendan Garrone()など、多彩なゲストが参加している。彼らたちのアドバイスや多彩なアイデアを、このアルバムに取り入れたのだろう。だからゲスト参加したバンドたちの影響をどこかに感じつつも、自分たちの個性と合わせ、オリジナルティーあふれるサウンドに仕上がっている。まさにニューヨーク・ハードコアの進化の最先端にいるサウンド。素晴らしい作品だ。

BUGGIN(バギング)
『Concrete Cowboys(コンクリート・カウボーイズ)』

シカゴ出身のハードコア・バンドのデビュー作。TURNSTILE(ターン・スタイル)やZULU(ズール)、 SCOWL(スカウル)、END IT(エンド・イット)と並び新世代のハードコアを代表するバンド。

黒人女性ボーカルのBryanna(ブライアンナ)を中心に、ドラム、ベース、ギターの3人が白人で構成されたバンドで、Maximum Penalty(マキシマム・ペナルティー)経由したEND IT (エンド・イット)から、Leeway (リーウェイ)に、WARZONE(ウォーゾーン)、MADBALL(マッドボール)などのニューヨークハードコア、ZULU(ズール)のようなサンプリングなど、アラビアンなメロディー、カントリー風のサウンド、ブレイクダウン、高速パート、メタリック・ハードコアのリフなど、いろいろな要素を融合したサウンドが特徴だ。シカゴのバンドらしく音楽的にマニアックで、オリジナルティーあふれるハードコアを展開している。

歌詞はくだらない仕事なのに十分な給料をもらっていないや、女性やトランスジェンダーを見下す男性中心のハードコアシーンの批判など、日常的な不満とフラストレーションについて歌っている。甲高い叫び声で激しい怒りに満ちたBryanna(ブライアンナ)のボーカルが、苛立ちを苛烈に吐き捨てている。

80年代のニューヨーク・ハードコアのリフから、アラビアンやカントリーなどの古典的なメロディー、ZULU(ズール)やEND IT (エンド・イット)などの現代的なハードコアの要素を、合体怪獣のように最強の部分だけ融合した。その新しいサウンドは、まさしく新世代を代表するハードコア。今年のベスト10に入ってくる注目の作品。

Death Lens(デス・レンズ)
『Vacant(ヴァカント)』

ロスアンゼルス出身のポスト・パンク・バンドの11作品目となるシングル。

初期のころはThe Ventures(ザ・ベンチャーズ)のようなイントロから、999系のパワーポップにガレージ・ロックを取り入れた、オールディーズの匂いがするパンク・ロックだった。『Fuck This』では、ノイジーなギターやWire (ワイヤー)のようなポストパンクなサウンドを取り入れた。『Beer Up Only Club』では、THE JAM(ザ・ジャム)のようなパンク・ロックに、アラビアンなメロディーなどを取り入れ、ブラッシュアップしたサウンドを展開。

そして出世作となった『No Luck(ノー・ラック)』では、差別や階級がある社会で民主主義と呼んでいることへの皮肉と反発や、直接人と接することのないZoom会議が中心の節活への閉塞感と孤独とストレス、人生の不安や困難などについて歌い、苦しい状況を抜け出した先には、希望があると、苦難を乗り越え成長する大切さを歌っている。苦難を乗り越える人生讃歌と、社会や政治、メンタルヘルスや個人的な人間関係と、内外問わず幅広い内容を歌ったパンク・バンドなのだ。

漏電した電流のようなギターから警告音が反復するフレーズの実験的なポストパンクな曲から、シンプルなメロディック・パンク、アコースティックのイントロまでの幅広い楽曲で、前作よりもシリアスで攻撃的なサウンドに変化した『No Luck(ノー・ラック)』と比べると、このシングルでは初期、THE JAM(ザ・ジャム)にエモを足したような野太いパンク・ロックを展開している。歌詞は<不安を感じている。それは私のなかで最悪な事態をもたらす。私は孤独で考えすぎてしまう。17歳の自分が子供であるかのように生きることにうんざり>など、悲観的で不安や苛立ちや孤独を感じる思春期のとまどった心境を歌っている。エモのような青春パンクな曲だ。

社会問題や内面世界の困難や葛藤を歌った前作と比べると、青春的な内容でポップになった印象がある。だが彼らなりの新しい新境地を開いた曲でもある。Epitaph Records(エピタフ・レコード)に移籍し、ポップな方向に進むのか、それともヘヴィーな方向に進むのか分からないが、いずれにしても次のアルバムは、おそらく相当気合の入った作品になるであろう。そういった意味では期待が持てる内容のシングルだ。