WARZONE(ウォーゾーン)
『Don’t Forget the Struggle, Don’t Forget the Streets(ドンド・フォーゲット・ザ・ストラグル、ドンド・フォーゲット・ザ・ストリート)』

Don't Forget the Struggle, DonDon’t Forget the Struggle, Don
Warzone

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ニューヨーク・ハードコア界では、GORILLA BISCUITS(ゴリラビスケッツ)やYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)と並び、第二世代のバンドとして知られているWARZONE(ウォーゾーン)。それ彼らが87年に発売されたデビュー作。長らく廃盤であったが、今回新たにリマスターされ再発された。

 

ニューヨーク・ハードコアの第二世代のバンドといえば、ストレートエッヂ思想をアメリカ全体に広めたユース・オブ・トゥディ、ハードコアの骨太のサウンドにポジティヴな明るさを加えたゴリラビツケッツ、ニュースクール・ハードコアの開祖といわれるJUDGE(ジャッジ)などが有名だ。

 

そんななか、ウォーゾーンはスキンズ・ハードコアという個性を確立し、丸坊主頭で軍隊上がりのような男くささが持ち味のバンドであった。彼らはスキンヘッズに支持されてはいたが、右翼的な思想はまったく持っていなかった。人種差別やハードコア・コミュニティーの排他的な暴力やナチズムと戦ってきたバンドなのだ。ここで歌われている内容は、愛国心や、スキンズとパンクスとの対立によって暴力沙汰に発展したハードコア・コミュニティーの団結について。自ら観客席に飛び込み、オーディエンスに揉みくちゃにされながら歌い、暴力を止めるという、独自のステージパフォーマンスで、カリスマ性を獲得したバンドでもあるのだ。

 

そのサウンドはスピーディーなオールドスクール・ハードコア。レーシングカーのようなスピードと、メタルなリフ織り交ぜたニューヨーク・ハードコアの伝統を継承しながらも、骨太のOiコーラスや演説などの要素を取りいれ、独自に進化させた。吐く息のように簡潔で矢継ぎ早に、言葉を放つボーカル。平穏な静けさから急激に性急なスピードが加わるサウンド。そこには心の落ち着きが急激に乱されるような攻撃性と焦燥感と熱気に満ちあふれている。

 

彼らのサウンドにはまるでスポーツの団体競技のような連帯感と団結心を感じる。いがみ合っていたお互いが、怒りや喜びをともに共有しあい、そして共感に変わり、共通の目的へと昇華していく。感情がポジティヴな方向へと変わっていく団結心のプロセスがあるのだ。

 

現在、ニューヨーク・ハードコア・シーンはファミリーのような結束力の強いシーンとして知られている。その概念を初めてもたらしたのが、まぎれもなく彼らなのだ。ボーカルのRAYBEEZが亡くなって19年になるが、いまだ忘れ去れることなくその存在は輝きを放っている。それほど彼らの功績は大きかった。これはニューヨーク・ハードコアの歴史の一枚を飾る名盤なのだ。