MOB47(モブ47)
『BACK TO ATTACK 1983-1986(バック・トゥ・アタック)1983-1986』

スウェーデン、伝説的ハードコアバンドの83年から86年までの作品すべてを網羅した、全124曲入りの2枚組アルバム。初期のころから一貫して反戦、反核などのアティチュードを掲げ、システムや国家権力を非難し、戦ってきたMOB47。ディスチャージほどの恐怖やシリアスさはないが、全曲、尋常でないほどのテンションの高さと、怒りと熱さがこもっている。ダイレクトに感情に訴えかけてくるという意味では、いかにもスウェーデンのバンドらしい個性が窺える。性急なビートと爆撃機のようなギターがとにかくカッコいいし、熱いし燃える。基本的にはディスチャージタイプの2コード、D-BEATに影響を受けたハードコア。だが、さらにスピード感が増した狂ったスピードのドラムと、ノイジーなギターサウンド、情感を重視したサウンドは、このバンドらしい個性が窺える。

 

ディスチャージのサウンドフォーマットに、プラスアルファーを加え、徐々に進化させた彼らだが、時系列に並べられたこのアルバムを聴いてみると、作品を重ねるごとにスピードが増していっていることが理解できる。中期には鼓膜が破れるほど振動の強い嗚咽のような叫び声があり、ギターが爆撃機のように、激しさが増し、さらにノイジー変化している。そしてなにより魅力的なのが、その歌詞。“何千万もの動物たちが実験室で殺されている。すべての実験動物を解放せよ”や“警察がすべてを制御するスウェーデン”、“宗教は洗脳”などの簡潔で直截的な言葉が並ぶ歌詞には、世界で起こっている様々な問題に、目を向け疑問意識を感じろと、ぼくの心にダイレクトに訴えかけてくる。思想的にはディスチャージの反戦反核に、クラスの反キリスト教、コンフリクトの反動物実験などに影響が強いが、それだけでなく、世界の警察を気取っているアメリカへの反発、当時アパルトヘイト政策で黒人を差別していた南アフリカへの批判、地元スウェーデンの腐敗など、様々な政治的問題を取り上げている。人間の自己中心的なエゴや欲望、欺瞞や暴力、破壊など、醜い部分に焦点を当てている。そして変えろ、理想に満ちた建設的な未来を築こうと、彼らは訴えているのだ。それがMOB47の熱さなのだ。ノー・ファン・アット・オールやリフューズドなどの、スウェーデン後生のハードコア・バンドに与えた影響も大きい。ハードコアが好きな人は、ぜひお勧めの作品だ。