Refused (リフューズド)
『Shape of Punk to Come (シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム)』

Shape of Punk to ComeShape of Punk to Come
Refused

Epitaph / Ada 2010-06-07
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98年発表の3作目。これがラストアルバムとなる作品。このアルバムを発表後、彼らは解散を発表する。解散を決意したバンドの作品というのは、たいてい目指していたサウンドの方向性が臨界点を超えたため、いささか倦怠的なムードの漂っていることが多い。だがここには弛んだところは一切ないし、覇気もいささかも衰えていない。倦怠期を迎えたバンドの作品とは思えない、クオリティーの高い出来に仕上がっている。

 

おそらくハードコア・バンドとしてのリフューズドは、前作が最高傑作だったのだろう。今作ではハードコアの荒々しいギターが減少している。だがらといってけっして悪い作品ではない。なぜなら前作で確立したボーン・アゲインストのカオティックな要素と、フガジの実験性あふれるフレーズを切り貼りしたサウンドを、さらに推し進めているから、確実に進化を遂げている。彼らの目指していたサウンドスタイルが完成したのは、今作といえるだろう。アルバム名はサックス奏者、オーネット・コールマンが59年に発表し、フリージャズという前衛的なサウンドを確立した作品『ザ・シェイプ・オブ・ジャズ・トゥ・カム』からをもじり、『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』と名付けた。そのアルバム名からは、前衛的なパンク・サウンドを確立したという自負と表明を感じることができる。

 

前作でベースとなっていた荒々しいハードコアのギターサウンドこそ減少したが、車の音やインダストリアルな工場の音のSEや、フリージャズ、アコースティック、スカ、ノイズ、デジタルのフレーズが、カオティックにめまぐるしく入れ替わるサウンドを展開している。

 

これだけいろいろな要素を詰め込むと音の整合性が難しく、消化不良に終わるケースも多々ある。だがこの作品がすばらしいのは、一つ一つのフレーズのかっこよさにある。ここで使われているフレーズは、美しいメロディーとは一線を画したどれもマイナーな音ばかり。たとえば“ニュー・ノイズ”では、時限爆弾のタイマーが刻々と時間を刻むような緊迫感を孕んだフレーズで、“リベラシオン・フィクンシー”では、壊れたラジオのノイズ音とスカのフレーズが静かに闘争心を煽る展開だ。どのフレーズも鋭利に尖りカッコいい音だ。フリージャズのパンク版とでもいうような前衛的なサウンドに、絶叫するボーカルや、緊迫感をはらんだ熱く魂をたぎらせるようなハードコアの衝動で、アルバム全体を統一している。激しい闘争心を感じるハードコアスピリッツと、前衛的な新しいサウンドを確立していく熱意が、奇跡的なグルーヴを生んだ。すばらしい作品なのだ。

 

この後、彼らは解散をするわけだが、おそらく決意した理由は、この作品で彼らが目指していたサウンドが完成し、バンドとして演りたいことをやりつくしたからではないか。ここでは、燃え尽きる前の激しい火花が散る瞬間をアルバムに閉じ込めている。まさに奇跡的な瞬間を収めたアルバムでもあるのだ。なお10年に発売された2CD+DVDの3枚組みでは、ライヴCDと06年に発売されたDVD『リフューズド・アー・ファッキング・デッド』が収録されている。