Drop Dead Siege Deranged Records 2008-05-06 |
ボストン・ハードコア・シーンで一際異質な個性を放っていたシージ。彼らが唯一発表した作品『ドロップ・デッド』の発売30周年を記念して、4曲のボーナストラックが収録され再発された。その内容は、84年に唯一発売されたデモ音源『ドロップ・デッド』から6曲と、ハードコアのコンピレーションアルバム『クリーンス・ザ・バクテリア』から3曲、今回新たに発掘された未発表曲が4曲、計13曲が収録されている。
シージの出自であるボストン・ハードコア・シーンとは、カオティック・ハードコアの代表格であるコンヴァージや、体育会系的なスポーティーなノリをハードコアに取り込んだDYSなど、ハードコア界のなかでもの突然変異を遂げたバンドを多く輩出したシーンだ。その例に漏れずシージも個性的なハードコア・サウンドを展開していた。
そのサウンドは、ジャームスの退廃感に満ちたスローテンポなサウンドに、SODのマシンガンのような高速スピードのドラムと1分台のファストな曲と、ノイジーなディストーションを加え、緊迫した空気を孕んだバイオレンスに発展させた。オリジナルティーあふれるハードコア・サウンドなのだ。
曲調や展開、歌いまわしこそ、ジャームスやSODなどのバンドから色濃い影響を感じることが出来るが、ミサイルのシャワーのようにとことん歪んだ分厚いノイズのギターや、苦悶の嘆きのようなデス声、フリージャズのトランペットを取り入れたカオティックな音は、彼らならではのオリジナルだ。退廃感に満ちたスローテンポから突如汚物を吐き出すようにピッチが上がっている独特の展開は、当時の2ビート、2コードの曲展開こそがハードコアだった当時としては、意外性あふれるサウンドだったらしい。現在、彼らのサウンドは、グラインド・コアやパワー・バイオレンス、クラスト・コアの先駆者として語り継がれている。それほど当時は画期的なサウンドであったそうだ。このサウンドから影響を受け、あとにヘレシーやナパーム・デスといったバンドたちがさらに発展したサウンドを展開したのだ。大きなインパクトは残さなかったが、隠れた名盤であるのだ。