War On Women(ウォー・オン・ウーマン)
Capture The Flag (キャプチャー・ザ・フラッグ)

ボルチモア出身の女性パンクバンドの18年に発表した2作目。<女性の戦争>というバンド名で、自らをフェミニスト・パンクと名乗る彼女たちは、フェミニズム思想を全面に掲げたバンドたちだ。Bikini Kill(ビキニキル)などのバンドが起こしたフェミニスト運動であるriot grrrl(ライオットガール) ムーヴメントに多大な影響を受けバンドを結成。とくにボーカルのPotter(ポッター)は、セクシャルハラスメントや強姦などの性的暴力と戦う女性コミュニティー団体であるHollaback(ホラーバック)のボルチモア支部を創設するほど、筋金入りの活動家なのだ。だが彼女たちは、男性に対してヒステリックな暴力で対抗するのではなく、法律を通じて女性の権利を求め、本を発表するほど知的で、教養を持った人物として知られている。

 

『Capture The Flag(旗を取れ)』と名付けられた2作目では、前作に引き続きシンプルでスピーディーな荒々しいハードコア・パンク。Black Flag(ブラッグ・フラッグ)から影響を受けた野太いギター・サウンドに、HOLE(ホール)を発展させたステリックな金切り声とシリアスな静謐を紡ぐ歌声が入れ替わるサウンド。

 

勢いと衝動に満ちた前作と比べると、今作では演奏に力を入れている。緊迫したシリアスさから立ち向かっていく攻撃力に変化していく曲から、地の底で静かにうねるベース、虐げられた感情を紡ぐギターのメロディー、メタルのギターソロ、簡潔な言葉で間段なくたたみかける2ビートのハードコアな曲、デス声など、バラエティー豊かな作品に仕上がっている。

 

歌詞の内容も前作に引き続き、女性の権利を求めた曲や、ミソジニストへの抗議、セクハラによる被害など、フェミニズム運動で訴えている内容が中心。今作ではアメリカ社会の格差や人種差別問題、強者を優遇するアメリカ政治への批判などが加わり、よりグローバルな視点で訴えている。ここで一貫して共通しているのは、戦い権利をつかみ取れということ。主張しなければ誰も知らないで終わるし、何も始まらないということ。ここではそんな内容を伝えたかったのだろう。

 

全体的に暗くシリアスな作品。けっして衝動的でなく、落ち着いた部分もみられる。不安や不幸という靄を振り払うような力強さと強い意志。どんなことにもめげず逆境を力に変えていくタフさ。それがこのバンドの魅力なのだ。