Auto(オート)
『Hardcore 2022』

シンガポール出身のアナーキスト・パンク集団のデビューEP。パンク/ハードコアの原始的な初期衝動やスピリットを持ったバンドで、下手でも音が悪くてもいいからとにかく初期衝動で突っ走ることを念頭に置いたサウンドが魅力のバンドだ。

そのサウンドのベースにあるのは、Chaos UK(カオス)UKのノイズ・コアやDischarge (ディスチャージ)に影響を受けた原始的なハードコア・サウンド。ノイズまみれで歪みまくったギターで、猪突猛進の勢いで突き抜けていく。音が聞き取りづらくこもった声のボーカルや手作り感にあふれたレコーディングなど、最近では失われてしまったD.I.Y精神や、パンク/ハードコアの元来の美学が貫かれている。

“Dog Eat Dog(ドッグ・イート・ドック(食うか食われるかの熾烈な競争という意味))”、 “Karoshi(過労死)”、“Out Of Control(制御不能)”、“Parasite(パラサイト)”、“Traps Of Life(人生の罠)”などの曲があり、そこでは、雇用者に虫けらのように扱われた人、人間不信の陥った人たちなど、敗残者たちの悲惨な人生について歌っている。

いろいろなものが多様化し、進化した昨今、昔にしかなかった初期衝動を見つけるには、パンク/ハードコアの後進国で新たな衝動にあふれた作品を発掘するしかない。発展途上にこそ発展性や将来の可能性、潜在能力がある。そんなことを感じさせる作品だ。