𝄃ユースクルー
1985年以降、活気に満ちていたクロスオーバー・スラッシュ・シーンは徐々に停滞し、代わって新世代のバンドによるニューヨーク・ハードコアの第二波が幕を開ける。この新たな潮流は「ユース・クルー」と呼ばれるシーンである。
「ユース・クルー(Youth Crew)」という名称は、Youth of Today(ユース・オブ・トゥディ)が1985年に発表したEP『Can’t Close My Eyes(キャント・クローズ・マイ・アイズ)』に収録された楽曲「Youth Crew(ユース・クルー)」に由来する。このムーブメントは、メタルの影響を排除し、SS Decontrol(SSデコントロール)やDYSといった初期ハードコア・バンドからの影響を色濃く受けている。ストレート・エッジとベジタリアン主義を前面に掲げ、思想的にもライフスタイル的にも一貫した姿勢を打ち出した点が特徴的だ。
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Revelation Records(レヴェレーション・レコーズ)を中心に、Bold(ボールド)、Gorilla Biscuits(ゴリラ・ビスケッツ)、Side By Side(サイド・バイ・サイド)、Warzone(ウォーゾーン)、Straight Ahead(ストレイト・アヘッド)、Judge(ジャッジ)といったバンドが次々と登場した。これらはユース・クルー・シーンを牽引した主要な存在である。
なお、ストレート・エッジではないものの、90年代のニューヨーク・ハードコアを代表するバンドとなるSick Of It All(シック・オブ・イット・オール)も、このユース・クルー・シーンから頭角を現したグループのひとつである。
ギャングやストリート・チルドレン、犯罪者、麻薬中毒者、貧困層などで構成されていた旧来のニューヨーク・ハードコア・クルーとは異なり、中産階級の若者が多く集まったユース・クルー・シーンは、「ライヴハウスにたむろするにはワルである必要はない」という価値観を提示した。
ユース・クルーはドラッグやアルコールを否定し、手の甲にXマークを描くことでその姿勢を示した。彼らはハードコア・シーンの一員でありながら、倫理観・道徳観・ポジティヴな思考による自己統合性を重視し、従来のハードコアの常識とは異なる生き方を誇りとして掲げた。
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ファッション面でも、フード付きのスウェットシャツやフットボール・ジャージ、ハイトップスニーカーにベースボールキャップといったスタイルが主流となり、アディダス、ナイキ、チャンピオンなどのスポーツブランドが好まれていた。これらはヒップホップ・シーンからの影響を受けたものであり、「ユース・クルー・ファッション」と呼ばれた。
思想、ファッション、音楽性のすべてが刷新され、ユース・クルーは新世代の若者を象徴するシーンとして台頭した。
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しかし、Judge(ジャッジ)の暴力的な側面や、1988年に起きたトンプキンス・スクエア・パーク暴動の影響も重なり、ユース・クルー・シーンは次第に人気を失い、孤立した存在へと変貌していった。最終的には、1990年にRay Cappo(レイ・キャポ)がYouth of Today(ユース・オブ・トゥディ)を脱退し、クリシュナ教へ改宗したことを契機に、シーンは自然消滅の道を辿ることとなった。