𝄃ユースクルーのバンドたち2
Gorilla Biscuits(ゴリラ・ビスケッツ)は、ユースクルー・シーンから登場したバンドである。とくに1stアルバム『Start Today(スタート・トゥディ)』は、Revelation Records(レヴェレーション・レコーズ)史上最も売れた作品として、絶大な人気を誇った。
Gorilla Biscuits(ゴリラ・ビスケッツ)
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出典:Gorilla Biscuits during the Start Today era. (Photo: Instagram)
Agnostic Front(アグノスティック・フロント)のようなアグレッシブなエナジーに、Dag Nasty(ダグ・ナスティ)を彷彿とさせるメロディーセンスを融合。Walter Schreifels(ウォルター・シュライフェルス)が紡ぐキャッチーなギターフレーズと、CIV(シヴ)の青臭くも切なく、前向きなボーカルが絡み合い、ハードコアのタフさと激しさの中に、希望に満ちたメロディアスなサウンドが息づいている。
それこそが彼らの最大の特徴であり、ユースクルー・シーンにおいて独自の地位を築き上げた理由でもある。
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Gorilla Biscuits(ゴリラ・ビスケッツ)がユースクルーの若者たちを惹きつけてやまない最大の理由は、どんな困難が待ち受けようとも、いばらの道を切り開いて前進していくという、ポジティブなメッセージに満ちた歌詞にある。
代表曲「Start Today(スタート・トゥディ)」では、「先延ばしにする?待てる?先延ばしにする?さあ今日から始めよう。〜今がその時だ。出かけるのが好きだ。でも誰がそうじゃない?」と歌い、やりたいのに踏み出せない臆病な気持ちを代弁している。その言葉は聴く者の背中をそっと押し、多くの若者に希望と行動のきっかけを与えてきた。
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また「Degradation(デグラデーション)」では、「差別主義者は俺たちのシーンを堕落させる」と、ナチスのファシズムや人種差別主義者を徹底的に非難。閉塞感に苛まれていた若者たちに、未来を自らの手で切り拓く勇気を与えると同時に、社会的な不正に対して明確なNOを突きつける強固な信念を示した。
「やりたいのに踏み出せない臆病な気持ち」を代弁しつつ、行動へと後押しする彼らの歌詞は、単なる励ましを超えて、聴く者の心に火をつける起爆剤のような力を持っていた。希望を歌うだけでなく、自分たちの信じる道を正々堂々と進むその姿勢こそが、多くの若者を惹きつけた理由である。
これらの歌詞は、Gorilla Biscuits(ゴリラ・ビスケッツ)の音楽が持つ「ポジティブなメッセージ」と「強い信念」という二つの側面を際立たせ、彼らが単なるバンドではなく、若者たちの価値観に深く影響を与えた存在であることを証明している。
Gorilla Biscuits(ゴリラ・ビスケッツ)
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出典:Mighty Sounds
Bold(ボールド)の前身であるCrippled Youth(クリップルド・ユース)は、当時13歳と14歳だったヴォーカルのMatt Warnke(マット・ワーンケ)、ベースのTim Brooks(ティム・ブルックス)、ドラムのDrew Thomas(ドリュー・トーマス)によって、ニューヨーク州カトナで結成された。1986年、カリフォルニアのレーベルNew Beginnings Records(ニュー・ビギニング・レコーズ)からEP『Join The Fight(ジョイン・ザ・ファイト)』をリリースし、その後Bold(ボールド)へと改名した。
Bold(ボールド)
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出典:Discogs_BOLD
Bold(ボールド)は、ユース・クルー・シーンの中でもYouth of Today(ユース・オブ・トゥディ)の弟分的な存在だった。ボストン・ハードコアに例えるなら、Youth of Today(ユース・オブ・トゥディ)がSS Decontrol(SSデコントロール)のような兄貴分であり、Bold(ボールド)はDYSのような弟分にあたる。ユース・クルー・ファッションやストレート・エッジ思想、そしてサウンド面においても、Youth of Today(ユース・オブ・トゥディ)からの影響が色濃く反映されていた。
Bold(ボールド)のサウンドは、Youth of Today(ユース・オブ・トゥディ)と同様に、SS Decontrol(SSデコントロール)、DYS、7 Seconds(7セコンズ)などをルーツとするストレート・エッジ・ハードコアであり、とりわけブレイクダウンやストップ&ゴーといった変則的な曲展開にこだわっていた。また、思春期前の少年たちによる青臭くも純粋な歌詞が、Boldの大きな魅力となっていた。
歌詞の内容としては、「Talk Is Cheap(口先だけの安っぽい発言)」では「説教するときは威張って大きなことを言うが、空約束ばかり」と歌い、「Now Or Never(今しかない)」では「時代は変わりつつある。俺たちは団結し、立ち向かわなければならない」と訴える。また「Always Try(常に挑戦すること)」では、「完璧な人などいないし、常に正しい人もいない。大切なのは目標に向かって挑戦すること。それが人生で重要かつ不可欠なことだ」と歌っている。
これらの歌詞は、挑戦することの素晴らしさ、若い世代による新しい時代の幕開け、友情、団結といった、挫折を知らない若者らしい健全で前向きなメッセージに満ちている。
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出典:Facebook_Bold
また他人とトラブルを起こすバンドとしても知られていた。ストレート・エッジとは対極のアティテュードを持つパーティーバンド、Murphy’s Law(マーフィーズ・ロー)のJimmy Gestapo(ジミー・ゲシュタポ)を、不用意な発言で敵に回したこともあり、若さゆえの軽率な言動が目立つ場面もあった。
バンド解散後には、ヴォーカルのMatt Warnke(マット・ワーンケ)がストレート・エッジを離れたことで、H2Oの楽曲「Here Today, Gone Tomorrow(ヒア・トゥディ・ゴーン・トゥモロー)」の中で、“ストレート・エッジのセルアウト野郎”と非難されるなど、シーン内で物議を醸す存在となった。
だが皮肉なことに、Bold(ボールド)が「新しい世代による新しいハードコア」を提唱したつもりが、ユース・クルーという枠組みに固執した結果、気づけば新しい世代のポスト・ハードコアが台頭し、Bold(ボールド)が掲げたストレート・エッジのスタイルは、時代遅れのものとなってしまった。何の因果だろうか。
Bold(ボールド)
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出典:Facebook_Bold
Judge(ジャッジ)は、ユースクルーを暴力的なシーンに変えたバンドだ。1987年、ニューヨーク。当時Youth of Today(ユース・オブ・トゥディ)にドラマーとして加入していたたMike “Judge” Ferraro(マイク・“ジャッジ”・フェラーロ)が、ギタリストのJohn Porcelly(ジョン・ポセリー)と出会う。二人はYouth of Todayユース・オブ・トゥディ)を脱退し、Judge(ジャッジ)を結成。
Judge(ジャッジ)
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出典:Facebook_New Wave 80’s Relive The Past
当時のユースクルー・シーンは、Youth of Today(ユース・オブ・トゥディ)がストレートエッジのポジティブなメッセージを発信していた。しかし、その厳格なベジタリアンや反アルコールの姿勢は、一部で批判の声も上がっていた。そんな状況にうんざりしていたJudge(ジャッジ)は、さらに過激なストレート・エッジを提示。アルコールやドラッグを摂取している奴らに、観衆を煽り、殴りかかるなど、戦闘的なライヴを展開していた。
Mike Judge(マイク・ジャッジ)は、ドラッグに溺れた親による家庭内暴力の中で育った。その経験から、彼はドラッグとアルコールを心底憎むようになる。親からの暴力が原因で内気かつ反社会的な性格を持つ一方、熱血漢でもあった彼の歌詞には、めちゃくちゃな人生、家族崩壊、荒んだ少年時代など、自身の人生観が色濃く反映されていた。その歌詞は、多くの悩みや問題を抱える観客の心を捉えた。しかし、その感情はやがて、酒を飲んでいる者を見れば殴りかかるという行動へと結びついてしまう。
ライヴにはスキンヘッズも集まるようになり、予期せぬ暴動が頻発。収拾がつかない状況に陥った結果、Judgeは1991年に活動を休止することとなった。
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過激なストレートエッジの歌詞は、『MAXIMUM ROCKNROLL(マキシマム・ロックンロール)』誌などのファンジンで多くの批判を浴びた。しかしJudgeは、ハードコアの基盤を崩すことなく、重厚なメタル・リフやモッシュ・パートを導入。Cro-Mags(クロマグス)、Agnostic Front(アグノスティック・フロント)、Crumbsuckers(クラムサッカーズ)、Leeway(リーウェイ)といったクロスオーバー・スラッシュ勢とは一線を画す、硬派なハードコア・サウンドを確立した。
この独自のスタイルは、ニュースクールやタフガイ・ハードコアなど、後のニューヨーク・ハードコアに多大な影響を与えた。
Judge(ジャッジ)
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出典:RevHQ