New York Hardcoreニューヨークハードコア・シーンについて (1990-1999)PART-2 クイーンズ・ハードコア

Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の最初期の看板バンドは Cold Front(コールド・フロント)だった。彼らはクイーンズ・ハードコアの始祖であり、後のストリート性の原型を作った存在でもある。ライブ後には外で口論が起き、そのまま複数人が絡む騒ぎに発展することも珍しくなかった。警察が来てもショーは止まらず、そうした混沌こそが当時の空気を象徴していた。Cold Front(コールド・フロント)は、クイーンズ・ニューヨーク・ハードコアの“ストリートの怒り”を最初に音として提示したバンドである。シンプルなリフながら、クイーンズ特有の土臭さと暴力性がにじみ出たサウンドは圧倒的で、彼ら以降のバンドに強い影響を与えた。こうして Cold Front(コールド・フロント)を起点に、後のクイーンズ・ビートダウンの原型が形づくられていくことになる。



その次に台頭したのが、暴力的なモッシュ文化を決定づけた Fit of Anger(フィット・オブ・アンガー)だった。1991年から Castle Heights(キャッスル・ハイツ)で活動していたバンドで、彼らのライヴは、低いステージに観客が乗りすぎてステージが壊れても演奏を止めずに続行するほど荒々しかった。Cold Front(コールド・フロント)よりさらに激しいライヴで、ブレイクダウンはまるで“殴り合いの合図”のように機能し、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)を本格的な戦場へと変貌させた。Fit of Anger(フィット・オブ・アンガー)は、クイーンズにおける暴力的ハードコアの基準を作り上げた存在であり、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の中でも特に危険度が高いバンドとして知られている。

Confusion(コンフュージョン)はブルックリン出身のバンドだが、1990年から Castle Heights(キャッスル・ハイツ)で頻繁に演奏しており、同会場のヘヴィ化を決定づけた存在だった。Cold Front(コールド・フロント)やFit of Anger(フィット・オブ・アンガー)の流れを継ぎつつ、Slayer(スレイヤー)的なリフやスラッシュメタルの攻撃性を大胆に導入し、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)のサウンドを一気にメタル寄りへと押し進めた。彼らが持ち込んだメタリックな要素は、その後の Irate(アイレイト)や Sworn Enemy(スウォーン・エネミー)といったバンドに受け継がれ、クイーンズ・ハードコアの“メタリック・ビートダウン”の源流となっていく。



1994年から Castle Heights(キャッスル・ハイツ)でライヴを行っていた Denied(ディナイド)は、典型的なクイーンズのローカルバンドであり、ブルックリンやブロンクスといった“よそ者”に対して強い敵対心を持ち、排斥する姿勢を隠さなかった。Castle Heights(キャッスル・ハイツ)のライヴでは、外部の客がステージダイブをするとクイーンズの観客が蹴りを入れ、曲の最中にフロアで乱闘が発生することも珍しくなかった。バンド側はそれを止めるどころか、むしろ煽るような態度を見せた。これは「Castle Heights(キャッスル・ハイツ)は観光客向けのライヴハウスではない」ということを象徴する出来事でもあった。クイーンズの観客は縄張り意識が非常に強く、外から来た客が空気を読まない行動を取れば、即座にトラブルへ発展した。Denied(ディナイド)のライヴで起きた事件は、外部の客が排除される典型例として語り継がれている。



もう一つ触れておくべきなのは、Denied(ディナイド)がクイーンズ・ビートダウン・ハードコアの構造を確立したバンドだという点だ。極端に重いブレイクダウンと、低音を中心に引きずるようなグルーヴ感によって、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の暴力性とメタル要素を融合させたサウンド・スタイルを打ち立てた。Denied(ディナイド)のサウンドは、クイーンズ・ビートダウン・ハードコアの“過渡期”に位置するスタイルであり、ここで提示された要素が、のちに Irate(アイレイト)が完成形として確立するビートダウン・ハードコアへと進化していく基盤となった。

Irate(アイレイト)はブロンクス出身のバンドだが、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の常連として知られていた。彼らのライヴは特に危険度が高く、ブレイクダウンの瞬間にフロアが完全に暴動化し、観客がステージへ雪崩れ込み、PA スピーカーが横倒しになるほどだった。それでもスタッフは誰ひとり止めず、バンドも演奏を続行し、曲が終わるまで“戦場”のような状態が続いた。この出来事は Castle Heights(キャッスル・ハイツ)を象徴する瞬間として語り継がれている。



Irate(アイレイト)は、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の暴力性を最も極端な形で体現したバンドである。Denied(ディナイド)が Bulldoze(ブルドーズ)の影響を強く受けたビートダウン・ハードコアの重さとスローテンポを突き詰めたのに対し、Irate(アイレイト)はそこにメタルの攻撃性を融合させた。Denied(ディナイド)のような太い1音1音のギター、低音の壁のようなリフ、ひたすら重く落とすクイーンズ特有のビートダウンを土台にしつつ、ブロンクス特有の荒廃したストリート感を加え、ビートダウンをさらに凶悪化させた。
さらに、スラッシュ・メタルの速弾きやデスメタル的な刻みを取り入れ、ブレイクダウン前に高速パートを挟むなど、テンポの緩急が激しい複雑な曲構成へと進化させたのが Irate(アイレイト)である。彼らは“重い”だけではなく、“殺気”のある方向へと進化し、ニューヨーク・ハードコアとメタルのハイブリッドを一気に押し進めた存在だった。

1997年に活躍した Mindset(マインドセット)は Sworn Enemy(スウォーン・エネミー)の前身バンドで、結成当初は「Downfall(ダウンフォール)」と名乗り、その後「Mindset(マインドセット)」へ改名し、さらに Sworn Enemy(スウォーン・エネミー)へと発展していった。Mindset(マインドセット)は Castle Heights(キャッスル・ハイツ)クルーの次世代バンドとして期待され、Irate(アイレイト)や Denied(ディナイド)と同じ空気を吸って育った存在だった。ブレイクダウンの置き方は完全に Castle Heights(キャッスル・ハイツ)的で、その流れがそのまま Sworn Enemy(スウォーン・エネミー)へと受け継がれていく。



Sworn Enemy(スウォーン・エネミー)は、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の遺伝子をニューヨーク・ハードコアの全国区へ持ち出したバンドである。Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の暴力性、Denied(ディナイド)が築いたクイーンズ・ビートダウンのスタイル、そして Confusion(コンフュージョン)や Irate(アイレイト)によるメタル性を融合し、新世代のサウンドとして確立。クイーンズ・ハードコアの2000年代を代表する存在へと上り詰めた。Ozzfest(オズフェスト)などの大規模フェスにも出演し、Castle Heights(キャッスル・ハイツ)の精神性を世界へ拡散したバンドでもある。