End It(エンド・イット) – Wrong Side Of Heaven(ロング・サイド・オブ・ヘヴン) (2025)

ボルチモア出身のアフロ・パンク・バンドによるデビュー作。初期はBad Brains(バッド・ブレインズ)直系の、けたたましい勢いを持つハードコアを基盤に、超早口のヒップホップ的な歌い回し、警察のサイレン、コンガの高速連射リズム、ビートダウンするサビ、Oi、うねりをあげるギターなどをミキサーに叩き込んだサウンドを展開していた。

今作ではニューヨーク・ハードコアの要素がより強まり、グルーヴィーに進化。力強いリズムのドラム、静かに落としていくビートダウン、理性がちぎれ飛ぶほどのエナジーとハイテンションのヴォーカルの叫び声――この世の怒りすべてをリズムに叩き付けるようなサウンドが印象的だ。

テーマは、アメリカに訪れる変化への意識、個人の成長、そしてハードコアの倫理観と誠実さの継続。「Billion Dollar Question(10億ドル保有者への疑問)」では「誰が死ねば、お前の贅沢は保たれる?」と問い、「Anti-Colonial(反植民地主義)」では「お前と俺のためにより良い明日を、永遠に見えざる者たちのために叫び続ける」と歌う。そして「Empire’s Demise(帝国の終焉)」では「250年。帝国は長く続かない。もっと早く終わりが来ることを願う」と、アメリカの現状を痛烈に批判する。権利主張や自己の成長、階級闘争や政治闘争といったテーマが、怒りの言葉で歌詞に刻まれている。

さらに、End It(エンド・イット)が大きな影響を受けたMaximum Penalty(マキシマム・ペナルティ)のカバー曲「Could You Love Me(私を愛してくれますか)」では、ハードコア、メタル、ヒップホップ、メロディックを融合させたニューヨーク・ハードコアの先駆者への多大なリスペクトが感じられる

近年、マムダニがニューヨーク市長に当選し、左派ポピュリズムが盛り上がるアメリカにおいて、富裕層やトランプ主義に抗する反権威の闘争を象徴する作品なのだ。