Identity(アイデンティティ) (2025)
カナダ・オンタリオ出身のオールドスクール・ハードコア・バンドによるデビュー作。1980年代のニューヨーク・ハードコアと、1990年代のクリーブランド・ハードコアを掛け合わせたようなサウンドが特徴だ。
クリーブランド系特有の不気味なギター、願望を渇望するようなエフェクトのかかった絶叫、ユースクルー系のストップ&ゴーを組み合わせ、ホラー映画のような緊迫感と、クモの糸を渡るような張りつめた気迫に満ちた音像を作り上げている。
「Identity(アイデンティティ)」では「お前はもう終わりだ。醜い偏屈な蛆虫。お前は地球のクズだ」と歌い、「Beyond Extreme(限界を超えて)」では「お前は私より強いと思っているのか?〜私の前から消えろ。さもないと分かるだろう」と叫ぶ。
さらに「End Of The Road(道の終わり)」では「疑問の道、明確な答えはない。終わりのない苦悩。人生は剥ぎ取られる」と、迫害された者の強烈な被害者心理を吐露している。
本作『Identity』は、クィアやトランスジェンダーであることによって迫害されてきたすべての人に捧げられた曲だという。過酷な経験を歌詞に落とし込み、自分の体、心、そして運命を自らの手で取り戻すことをテーマにしている。
迫害という虐げられた体験が生み出すサウンドは、暗いトンネルの中で必死に穴を掘り続け、一筋の光を探すような切迫感に満ちている。出口は見つからないかもしれない。それでも掘り続けなければ希望は訪れない。希望が見えるまで決して諦めない——そんな強い意志がこの作品から伝わってくる。