Reinventing Axl Rose Against Me! No Idea Records 2004-01-06 |
02年に発表されたデビューアルバム。アメリカン・パンクに、カントリー&ウエスタンやカーボーイソングなどを加えた、彼らならではのオリジナルなスタイルを構築したのはこの作品から。ラモーンズから影響の受けたノイジーで荒々しいギターに、猛り狂うカーボーイのメロディーを加え、苦悩に満ち溢れたボーカルのエモーショナルな叫び声で歌った。パンク荒々しさと、カーボーイスタイルの勇ましい叫びを加えた、激しい衝動に満ちた作品なのだ。
おそらくこれほどの息詰まるような生々しい初期衝動に満ちあふれたのは、この作品のみだろう。普通、パンク・バンドの作品といえば、初期衝動に満ちた1作目や2作目が最高傑作であるケースが9割がた占める。だが彼らの場合、この初期衝動がけっして最高傑作ではない。たしかに“ヨルダンズ・ファースト・チョイス(日本語名:ヨルダンの第一選択)”や“ゾウズ・アナーコパンクス・アー・ミステリアス(日本語名:アナーコ・パンクは神秘的だ)”というタイトルの曲などは、政治的な怒りに満ちている。そこには<世の中を変えたい>という自らの理想へ世の中を変えたいという強い想いがあり、激しくエモーショナルで、パンクな作品であることに間違いはない。
だがこの作品に関していえば、世の中や自分を変えたいという強い想いが、逆に空回りをしている。おそらく本人たちは意識して作っていないと思うが、このアルバムを全体を支配しているのは、理想主義的な考えだ。たとえばアルバムタイトルにある“リインヴェンティング・アクセル・ローズ”とは、ガンズ・アンド・ローゼズのボーカル、アクセル・ロースことだ。このアルバムでは、世の中を変えたいという政治理想と、アクセル・ローズのようなロックスターに憧れる羨望の想いに溢れている。その手の届かない位置にある理想主義が、届かぬ想いという哀愁に変わり、絶叫や衝動がなんともいえない息苦しさに繋がっているのだ。あまりにも理想主義的な考えが強すぎて、サウンドのかっこよさが後回しにされているのだ。だがサウンド的には前EPよりも、さらに飛躍を遂げている。おそらく今作の失敗点がつぎの最高傑作に繋がるヒントとなったのではないか。彼らの進化の歴史を知るうえでは重要な作品なのだ。