Searching for a Former Clarity Against Me Fat Wreck Chords 2005-09-05 |
05年に発表された3作目。今作では前作で確立したカーボーイやカントリー&ウエスタンを取り入れたメロディック・パンクというサウンドスタイルを、さらに発展させヴァラエティー豊かなサウンドに進化している。
今作ではプロデューサーに、テキサス・イズ・リーズンやプロミス・リングなどのエモの名盤を手がけたJ・ロビンスを起用。そのためなのか、今までになかった新しい要素が加わっている。たとえば“マイアミ”では、60年代のジャズ喫茶のような雰囲気を感じさせる艶やかなブルース、“ミディオクリー・ゲッツ・ユー・ペアーズ(ザ・ジェイカー)”はメロディーを重視したパンクナンバー。“アンプロテクデット・セックス・ウィズ・モルティプル・パートネス”はファンクのリズムにパンクの荒々しいギターを合わせた曲。“ヴァイオレンス”では、エモの長めのイントロやノイズギターを展開している。ブルースからファンク、エモやメロディーなど、ヴァラエティー豊かに新しいサウンドを貪欲に取り入れているのだ。
これだけ新しいことにチャレンジすると、基板となるサウンドとの調和を崩し、感情移入できない作品になるケースが多々ある。ましてやメロディックパンクというシンプルなサウンドを展開しているバンドだとなおさらだ。だが彼らの場合、熱量のある歌声は変わっていないし、ベースとなるサウンドやカーボーイ気質の荒々しい男くささという精神性がブレていない。だからいい作品に仕上がっている。
なによりポリティカルな姿勢が貫かれている。日本語で「かつての明瞭さの検索」と名付けられたタイトルが示すとおり、今作では明瞭さの検索を軸としたコンセプトアルバムなのだ。歌詞は政治的で、とくにブッシュ政権について非難の言葉を発している。シングル曲になった“フロム・ハー・リップス・トゥ・ゴッズ・イアーズ(ザ・エナジャイザー)”では、イラク戦争について語り、アメリカ軍人をテレビゲーム感覚で平気で人を殺していくライス国務長官に向けて、明瞭さを欠いた人間のおろかさを歌っているのだ。
前作のシンプルさも最高だったが、今作では憤りや怒りに満ち溢れた曲、ガッツにあふれた曲、内省的な曲など、前作よりも感情のヴァラエティーが豊富にな、人間味豊かな表情のある作品に仕上がっている。前作に匹敵するくらいいい作品なのだ。