Verses of the Bleeding Abnegation Good Life |
ペンシルバニア州出身のヴィーガン思想を掲げるストレート・エッヂ・バンドの、97年に発表された最初にして最後となる1枚目のフルアルバム。93年ごろから活動を始め、過去にデモとEP、スプリットを合わせた作品を、4年間の間に計6枚発表している。
彼らの活動といえば、95年に動物愛護運動家でシーシェパードの活動にも参加しているRod Coronado(ロッド・コロナド)の活動資金提供のために制作された、アースクライシスも参加したことで知られているコンピレーションアルバム『Stones To Mark A Fire (ストーンズ・トゥ・マーク・ア・ファイヤ)』に参加したことで有名だ。
改めのこの作品を聴いてみると、サウンドはニュースクール・ハードコアというより、パワーヴァイオレンスや、デスメタルに近い。しかも音質がペラペラで音に迫力がない。オリジナルティーもあまり感じられない。
歌詞は反キリストや悪魔崇拝や絶望に満ちた内容が多い。ヴィーガンやストレートエッヂ・バンドにある外の世界に向かっての闘争的な内容や怒りの内容は、この作品にはない。イギリスのメタルバンド、ヴェノムのカヴァー曲も収録されているし、実際にはヴィーガン思想よりも悪魔崇拝のほうが上回っているのだ。
おそらく彼らが強い信念を持ったストレートエッヂ・ハードコア・バンドとして認知されてしまった理由は、『ストーンズ・トゥ・マーク・ア・ファイヤ』に参加したからだろう。このコンピレーションの販売目的自体がラディカルな理由だったので、強烈なヴィーガン思想をもったバンドたちしか参加できないと、捉えられてしまったのだろう。
あくまでも僕の想像だが、彼らが『ストーンズ・トゥ・マーク・ア・ファイヤ』に参加した理由は、自身がストレートエッヂではなく、社会に対する憎悪、とりわけ人が嫌がる、反社会的な行動をとりたかったからではないか。彼らアルバムからは不快なものへのフェティシズムを感じることができる。彼らは屈折しているのだ。
個人的には穿った見方をしてしまったが、ストレート・エッヂ・バンドの作品のなかでは、100選に選ばれるほど、重要な作品なのだ。