American Lesion American Lesion Atlantic 1997-11-04 |
98年にアメリカンリージョン名義で発表されたBAD RELIGION(バッド・レリジョン)のボーカル、Greg Graffin(グレッグ・グラフィン)のソロ。激しく速いバッド・レリジョンとは違い、ここではピアノを中心とした上品なジャズや、牧歌的なアコースティックを展開している。グレッグのボーカルもハイテンションな激しさから、情緒的で物静かな歌い方に変わった。社会的な批判を歌ったバッド・レリジョンとは違い、グレッグの日常を歌った内容に変化している。そのため教条性や思想性はなくなり、哀愁や感傷がアルバム全体を支配している。どうやらグレッグが離婚を経験したときに書かれた曲らしいが、そこには辛さや悲しさなどを経験してきた大人だけが感じ取ることの出来る、枯れた円熟味がある。
ここに収録されているのは、典型的なルーツミュージックへの回帰。本来グレッグは、ハードコアよりも、ユートピアのころのトッド・ラングレンや、エルヴィス・コステロが好きだという。だからさほど驚くべきことではないし、理解も出来る。
ただバッド・レリジョンでは出来ない方向性の曲を作ったというよりも、グレッグが作った原曲をそのまま提示したという感じだ。『グレイ・レース』に収められている“シーズ”のリメイクを聴けばわかるが、激しいギターとスピード感がなくなり、メロディーはピアノに変化しているが、旋律や歌い方は変わっていない。メッセージに比重を置き、さらに哀愁が増している。
グレッグ自身、バッド・レリジョンの原曲をピアノで作っている曲というが、この“シーズ”がまさにその典型なのだろう。
この作品でバッド・レリジョンの原型も理解できるし、今まで見せたことのなかったグレッグ・グレフィンの素顔やプライヴェートな一面も、容易に想像することもできる。バッド・レリジョンとは、またのべつの魅力が詰まった作品だ。