Closure in Moscow (クロジュア・イン・モスコ)
『Penance & the Patience(ザ・ペンアンス・アンド・ザ・パティエンス)』

Penance & the PatiencePenance & the Patience
Closure in Moscow

Import 2016-05-23
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オーストラリアのメルボルンから、ポストスクリーモバンドの、08年発表のデビューEP。初期マーズ・ヴォルタをパンクサイドからアプローチとでもいうのか。でもそれだけじゃない。セイオシン以降のスクリーモや、サーカ・サヴァイヴのプログレの世界観を踏襲したパンクなどの要素も感じる。パンクやプログレ、スクリーモが混ざった亜種混合のサウンドなのだ。

 

サウンドフォーマットとはスクリーモ。だが、スクリームがない。それが彼らの特徴のひとつだが、なにより魅力的なのが、メタルからの影響がないところ。暗いトーンの脆さを感じる透明な美声のボーカル。感情の高ぶりを表現するスライドギター。その激しさを鎮めるように、穏やかに、そして諦観にぬりつぶされた絶望を待ってようなアンティーク調の不気味なシンセとピアノの音。まるで帝政ロシア末期のような、混沌とした暗い世界観だ。それは<モスクワの閉鎖>と名付けられたバンド名と、マルクス主義のような宗教を否定した歌詞からも感じとることができる。

 

たとえば、We Want Guaranteesでは、宗教について歌っている。そこでは、普遍的な真理を追究する人間の心を巧みに操り、利用しているのが宗教で、欺瞞を孕み、物事の真実を見極めるのは難しいと言っている。まるで目に見えないものを否定し、物質主義こそが真実と唱え、宗教を禁止したマルクス主義のような考え方だ。アンティーク調のノスタルジックと、スクリーモ、プログレとの融合。重く暗いサウンドある美しさ。これはヤミ付きになる。