Dusk & Summer Dashboard Confessional Vagrant Records 2006-06-27 |
06年発表の4作目。前作に引き続き、ここでもロックサウンドを展開している。『ダスク・アンド・サマー(夕闇と夏)』というタイトルが示すとおり、真夏の燃えるような情熱と、力強さにあふれている。そこには悲しみのかけらがまったくない。いつになく熱く、力強いシャウトのボーカルが、激しく肉体的にロックしている。
基本となるミディアムテンポのロックサウンドこそ、前作と変わらないが、真夏と海という綺麗なメロディーを連想させるギターサウンドにこだわり、自らが納得するまでとことん緻密に練られた痕跡が見受けられる。
その音へのこだわりは、プロデューサーの人選にも顕著に現れている。一昨年にU2やボブ・デュランなどのプロデュースで知られるダニエル・ラノワのもと制作されたアルバムを白紙に戻し、リンキンパークやパールジャムなどで知られるドン・ギルモアのもと、再度、録り直しをしたという。アルバムの最後にダニエル・ラノワがプロデュースをした曲“ヘヴン・ヒア”が収録されている。その曲を聴くと、ギターレスで無機質なデジタルサウンドの美しさより、繊細な感情までも伝えるウエットなエレキギターの音色で、人間味のあふれた、生々しい熱いロックを作りたかったということが判る。
それにしても今作は熱い。歌詞も<待つんじゃない。今しか道はない>や、<燃え尽きるまで燃やし続けろ>といった、熱い情熱で前ヘ突っ走ろうとする内容が目立つ。そこには沈む夕日に向かって走る努力や根性、勇気や青春といった、時代錯誤な言葉が浮かんでくる。まるでむかしの森田健作の青春世界そのものだ。
この暑苦しいサウンドは、醒めた日本の若者にはウケないだろう。だがぼくは、夕日にさざなみが反射してキラキラ光るようなこのサウンドが美しいと思うし、クリスの古臭い男くささがなによりも大好きだ。