アンプラグド ダッシュボード・コンフェッショナル ビクターエンタテインメント 2002-12-25 |
正直に言って、ぼくはこのアルバムのDVDを観るまで、彼らの魅力が分からなかった。まさに一曲入魂とでもいえる悲痛な想いがこめられた熱い歌声。優しくなでるように響くアコースティックの音色。ファンとミュージシャンがシンパシーの域を超えた空間の共有。それまでエモのアコースティックヴァージョンという認識しかなかったぼくのイメージを覆すほど鮮烈な印象を与えてくれた。
このアルバムは、ニューヨークMTVスタジオで行われた、ダッシュボード・コンフェッショナルのアンプラグド・ライヴを、CDとDVD、2枚に収録した作品だ。アメリカのMTV2でオンエアーされ、すべて過去の曲から選出。いい曲だけを集めたベストな内容だ。1曲ごとにギターを代え完璧さを求める演奏もさることながら、そのファンとミュージシャンが一緒になった一体感と熱量がすごい。
ライヴでは、クリスの声がかき消されるほど、終始ファンが一丸となって大合唱している。全員が真剣な眼差しで初恋の思い出や、化粧を落とした本当の自分を愛してほしいという欲求を、告白し、心の傷をぶちまける姿は、感動の粋を越えた純粋な想いがあった。
元来フォーク/アコースティックとは、ギターとボーカルという編成だ。そのシンプルな編成だからこそ、歌声の魅力と強烈な歌詞のメッセージ性が重要になってくる。ボブ・ディランやジョーン・バエスが、絶大な人気を獲得した理由にはそこにある。ダッシュボード・コンフェッショナルの場合、ビバリーヒルズ青春白書のような、内面の葛藤や、懺悔や後悔、妊娠、初恋の失恋など、だれもが起こりうる学校生活のトラブルや悩みを、10代の視線で歌った。それが学生生活を送るごく普通の青年たちの共感を得た理由だろう。
このアルバム以降、アメリカでは5000人規模のライヴならすぐにソールドアウトになるほどの人気を獲得した。彼らの最高傑作といえる作品だ。