Interiors Quicksand Imports 2017-11-09 |
じつに22年ぶりとなる3作目。90年代を代表するポスト・ハードコア・バンドで、ニューヨーク・ハードコアの重鎮としても知られ、2作を発表して瞬く間に解散。活動期間が短く、正直この先アルバムを発表するとは思っていなかったが、ここにきてまさかの再結成。
個人的にウォルター・シュレイフェルズが結成したバンドのなかでで一番好きなのはクイックサンド。その理由は独特な世界を持っているから。その世界観とは、シュールレアリスムのような奇怪なものや幻想に価値を見出すアンビバレンスな美しさ。まるでクレパスの底で瞑想しているような暗く深い孤独な静謐。聴くものに落ち着きとまどろみと恍惚を与えてくれる秩序と混乱が入り乱れた幻想的なサウンド。そんな世界観がぼくは好きだった。
そして発表された今作では、まさにぼくが求めていたクイックサンドが帰ってきたという内容の作品。過去のイメージが鮮烈すぎるバンドほど、期待外れに終わるケースがあるが、彼らに限ってはそんなかとはなかった。
そのサウンドだが、1作目(『Slip(スリップ)』)のエコー&ザ・バニーメンをハードコアに解釈したサウンドに、2作目(Manic Compression『マニックコンプレッション』)のノイズギターと、トリッキーでサイケデリックなテクニカルなギターサウンドをたして2で割ったような内容。1作目と2作目のいい部分を合わせた作品なのだ。サイケデリックなギターの揺らめき、穏やかさと厳かさ、微睡みと恍惚など、メロディーとノイズと低音と高音が高速のスイッチのように入れ替わるサウンド。彼らはまったく変わっていない。ここにはまさにぼくが求めていたクイックサンドの理想のサウンドがあるのだ。個人的には今年のベスト10に確実に入ってくる作品だ。