『The Emo Apocalypse(ザ・エモ・アポーカレス)』

06年にドイツから発売されたコンピレーション・アルバム。『The Emo Apocalypse (ザ・エモ・アポーカレス)』というタイトル通り、エモ・バンドばかりを収録している。エモといってもJIMMY EAT WORLD(ジミー・イート・ワールド)に代表されるようなポップエモのバンドは一つもいない。ものすごく乱暴に例えるなら、Texas Is the Reason(テキサス・イズ・リーズン)の古典的なエモーショナル・ハードコアから、Converge(コンヴァージ)のカオティック・ハードコアに進化していく過程の、そのふり幅の間にあるバンドを集めたコンピといえるだろう。

 

収録バンドはCease Upon The Capitol、Khere、Loma Prieta、D Amore、Her Breath On Glass、The Birds Are Spies They Report To the Trees、Kias Fansuri、June Paik、Enoch Ardon、Cagliostro、Louise Cyphre、Trainwreck、Architects、A Fine Boat That Coffin、Ten And Two、The Walls You’ve Built、Balboa、Only For The Sake Of Aching、Belle Epoque、Catena Collapse、The Critic、Manhattan Skyline、Am I Dead Yet、Petetheepiratesquid、Alegory Of The Cave、Antithesis、Towers、Funeral Diner、I Spoke、Escapado、Violent Breakfast、Monocycle、Arse Moreira、Pyramids、Suis La Lune、Kurhaus、Orbit Cinta Benjamin、A Day In Black And White、SL 27、Mr Willis Of Ohio、Van Cosel。の計42バンド。すべての収録曲は30秒前後で終わる、センシブでうるさくファストな曲だ。

 

このなかで有名なバンドといえば、カルフォルニアのLoma Prieta(ロラ・ピエタ)や、ボストンのHer Breath On Glass(ハー・ブレス・オン・グラス)、サンフランシスコのFuneral Diner(フューレル・ダイナー)ぐらい。あとはあまり知られていないバンドが多数を占めている。

 

全体の特徴をいえば、どのバンドもスクリームと暴走するスピード、荒れ狂ったノイズがある。すべての理性が消し飛ぶようなその躁状態のサウンドはありまるで、すべてを吹き飛ばす荒れ狂った巨大竜巻のようなサウンドを展開している。

 

どのバンドも尋常でないテンションのサウンドを展開している反面、同じようなサウンド・スタイルのバンドが多く、これといった特徴があるバンドがあまりないのが欠点だ。

 

そのなかでもとくに印象深いのは、ノイズギターが一切なく繊細なメロディーを高速で奏でるエスクぺリメンタルなサウンドを展開しているBelle Epoque(ベル・エポック)、無機質でテクニカルなメロディーが不快なノイズの歪に変わっていくA Day In Black And White(ア・ディ・イン・ブラック・アンド・ホワイト)。彼らはエモや激情の範疇に捉われず独特なサウンドを展開している。そして首を絞められた女性のような金切り声をあげるOrbit Cinta Benjamin(オアビット・チンタ・ベンジャミン)は、激情コアの先にあるもっと過激なサウンドを目指している。

 

さずがエモ/激情のコンピとだけあって、ものすごく激しいサウンドだが、どのバンドも外へ向かって闘争していくというよりも、自閉症的というか、内面世界に感情が根付いている。エモといえば腐るほどコンピがリリースされているが、この作品は意外とありそうでなかったジャンルのバンドたちを集めたコンピなのだ。