Incendiary(インセンダイアリー)
『Thousand Mile Stare (サウザント・マイル・ステア)』

Thousand Mile StareThousand Mile Stare
Incendiary

Imports 2017-05-11
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ニューヨーク州ロングアイランド出身のニュースクール系ハードコア・バンド3作目。これが成長を感じさせるすばらしい作品に仕上がっている。前作までは、108, Visions Of Disorder(ヴィジョン・オブ・ディスオーダ)や Buried Alive(ベリッド・アライブ)などのスローテンポでグルーヴ感を意識したニュースクール系ハードコアからの影響が勝った。

 

今作では前作までのサウンド路線にプラスアルファを加え、自分たちのサウンド・スタイルを確立している。終始ゆったりとしたリズムで、変則的なリズムでザクザク刻むギターのリフ、グルーヴ感の強いドラムの、グルーヴ感を重視した展開こそ変わりはない。今作でとくに印象的なのが、怒りの言葉をヒップ・ホップのリズムに乗せまくし立てるボーカル。そこにはRage Against the Machine (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のような、虐げられたマイノリティーの怒りを感じる。

 

とくに怒りが顕著なのは1曲目の“Still Buming(いまだ燃えている)”の歌詞。ここではwe got to know some pain to show we’re still here~still beating、still burning(私たちはいくつかの痛みを知るようになった。私たちがまだここにいることを示す。~また殴られる。また燃える。)と、歌われている。その内容は、抗議デモで警官に殴られるような場面を想起させる。正当な権利を主張すれば、政府によって弾圧され暴力を振るわれる虐げられた者の悲惨さ。そんな弱者の怒りに満ちているのだ。

 

マッチョでギャングな不良の匂いがするバンドが多いニューヨーク・ハードコア・シーンでは、ポリティカルで闘争的なアティーテュードを持ったバンドは珍しい。だがこれほどの怒りや闘争心を持ったバンドもニューヨーク・シーンでは少ない。ぼくのフラストレーションを発散させ熱い気持ちを掻き立てるいい作品だ。