BORN TO EXPIRE LEEWAY MARQUEE RECORDS 2014-12-12 |
ニューヨーク・ハードコアで、伝説のクロスオーバー・バンドとして語られているリーウェイの88年のデビュー作。長いこと入手困難になっていた作品だが、ブラジルのスラッシュメタル系レーベルマーキュリーによって、全曲リマスタリングされ、9曲のボーナストラックが追加。デラックス版として2015年に再発された。
彼らがなぜ伝説のバンドと呼ばれているかといえば、後世にあたえたインパクトにある。自らをニューヨーク・シティー・ファイネスト(極上)・ハードア・メタルと呼び、スラッシュ・メタルとハードコアを折衷させた。メタルとハードコアのクロスオーバーといえば、D.R.Iやスイサイダル・テンデンシーズが有名だ。だが彼らの場合、クロスオーバーの折衷率が違う。当時ニューヨークで活躍していたアグノスティック・フロントは、あくまでもハードコア中心のサウンドで、比率からすると2対8くらい。あくまでもギターソロの部分でしかメタルを取り入れていなかった。そしてスイサイダル・テンデンシーズやDRIでは、メタルとハードコアの折衷率が5対5くらいまで増したが、あくまでもハードコアがベースでメタルを肉付けした形だった。
しかし彼らはメタルとハードコアの比率を3対7まで引き上げた。もはやギターのリフやメロディー、ハイトーン気味のボーカルからは、アンスラックスの影響が強いスタッシュメタルをベースにしたサウンドなのだ。ここまでくるとスタッシュ・メタル・バンドといわれても過言ではない。だがなぜ彼らがハードコア・バンドとして捉えられているかといえば、ニューヨーク・ハードコア・コミュニティー出身という出自と、怒りに満ちた歌詞とヒップホップの要素を取り入れた部分にある。
その歌詞の内容は、黒人とユダヤ人が襲撃しあう恐怖と暴力に満ちた日常や、欺瞞に満ちた宗教についての社会問題や、困難な壁に立ち向かっているリアルな自分の人生について歌っている。モービット・エンジェルとナパーム・デスの違いが、サウンドよりも歌詞の内容にあるように、リーウェイのハードコアも、歌詞にあるのだ。緊迫感に満ちたリアルな日常への怒りに満ちた歌詞は、間違いなくハードコアなのだ。
その直截的な怒りの内容を歌った歌詞と、ハードコアコミュニティー出身という出自からかもし出されるシリアスで緊迫感に満ちた空気が、スラッシュ・メタルなサウンドに独特のハードコアエッセンスを加えているのだ。それがリーウェイにしか演ることのできないサウンドを生み出しているのだ。
彼らがスラッシュ・メタルにハードコアの空気感を加えたサウンドは、結果的にニューヨーク・ハードコア界に自由さをもたらせた。90年代に入り、クリシュリナ教を取り入れたシェルターや、ニューウェヴの要素を加えたクイックサンド、ピップホップを取り入れたマッドボールなど、いろんなサウンドを柔軟に取り入れたバンドがニューヨーク・ハードコアでたくさん現れた。そういった意味では先駆者である彼らの功績は高いのだ。