Enemies Pele Polyvinyl Records 2002-10-15 |
03年発表の5作目。ラストアルバム。もはや青葉が萌えるよう透明さはなくなった。癒し系インストメンタルであることに変わりはないが、ノイジーな雑音が主張し、にぎやかに変化している。今作では、ラップトップパソコンを使ったジョンの存在が目立つ。インストメンタルのバンドサウンド自体に変化はないが、その隙間を這うようにスペイシーな効果音から、エラー音、いびつなデジタル音などの雑音が、ささやかに主張している。手拍子やシャウトなども加わり、雑多感も増している。ギターメロディーもフラメンコなどの要素も加わりヴァラエティーが豊かに。持ち前の透明なメロディーに、隙間を這うように雑音が絡み合うサウンドからは、まるでおもちゃの缶詰のように何が出てくるか分からないワクワクするような楽しさがある。
穏やかで大人しい印象が強かった前作と比べると、のびのびとした躍動感がある。穏やかで静かな森林が前作だとすると、今作ではそのなかの小鳥たちのさえずりや小さな生命の営みなどの大自然の細やかな雑多な音まで表現しているようだ。そこにある雰囲気は、軽快で明るく愉しげ。おそらく彼らの最高傑作を3作目に挙げるひとが多いと思うが、個人的には一番好きな作品だ。その理由は、前作までにあったまじめな堅苦しさが抜け、どこか吹っ切れたような無邪気さと遊び心に満ちているからだ。
しかし彼らは、この作品のあと、TOEとのスプリットを04年に発表し解散してしまう。おそらく4作品目で演りたいことをやりつくし、この5作目で実験的な遊び心にあふれたアルバムを作ったのだろう。世間的な評価は気にせずに。だから解散をしたのではないか。だがこの作品のクオリティーは高く、いまだにその解散が惜しまれるほど燦然と輝いている。ぼくはこの作品の雑多感と無邪気さが、なんともいえないほど好きだ。