Pleasure Leftists(プレッシャー・レスティストス)

アメリカは中部オハイオ州クリーブランド出身のポストパンクバンドの11年に発表されたデビューEP。暗闇で炎がゆらめくようなサイケデリックなメロディーや、静かに感情を煽っていくベース、切迫感に満ちたギターからは、ジョイ・ディヴィジョンの影響を色濃く感じる。だがジョイ・ディヴィジョンとの決定的な違いは、女性ボーカル、ヘイリー・モーリスの歌声と世界観にある。ジョイ・ディヴィジョンといえば、死への切望が悲しいまでの透明な美しさがあった。それに比べるとダークで透明な美しさはない。あるのはエロティックで耽美な美しさ。ヘイリー・モーリスが歌う歌声は、感情が抑制され、まるで毒リンゴを作る魔女のように呪術的。心の奥底で湧き出た小さな感情が、煮えたぎるアワのように次第に大きくなっていくように、静かに激しく変化していく感情を歌っている。彼女が影響を受けたボーカルスタイルは、1950年代のフランスのバラード歌手のエディット・ピアフだという。だからなのか、70年代のサイケディック・カルチャーのようなノスタルジックがある。まるで30年近く文明の遅れている国に足を踏み入れたときのような、世間から取り残された感覚に陥る。古臭い空気が漂っている。その感覚がこのバンドの魅力といえるだろう。アメリカではこの手のサウンドを展開しているバンドはあまりいない。ニューウェーヴ好きにお勧めのEPだ。