ギルト・ショウ ゲット・アップ・キッズ ビクターエンタテインメント 2004-02-20 |
04年発表の4作目。2作目のパンクチューンと、3作目のギターアレンジを、合わせたサウンドだが、ここまでくるとメロディックパンクでない。ポップロックに近い作品。勢いもないし、じっくりと聴かせてもいない。だから中途半端な印象を受ける。おそらくこのころにはバンドに対する情熱も薄れ、解散を考えていたのではないか。アルバム全体にどこか倦怠感や諦観、悩みから吹っ切れたときのような清々しさが漂っている。
たしかに勢いやその反対のバラードもない作品だが、ソングライティングや演奏家としては前作以上に充実している。この時期、各メンバーのソロプロジェクト、ニュー・アムステルダムスやレジー・アンド・ザ・フル・エフェクトなど、個別の活動を行っていた。ソロプロジェクトの合間をぬって、メンバーそれぞれがゲット・アップ・キッズのために作った曲を録音し、みんなで話し合い、気に入らない箇所を修正しながら録り直したそうだ。
ソロ作品と同時期に製作されたためなのか、とくにキーボードのジェイムスと、ギター、ジムの個性が光っている。ギターアレンジは、アメリカ・インディーズのみからの影響。曲の展開も、盛り上がるサビからいきなり静かなアコースティックへと変化したり、意外性に富んでいる。インディーロックを大衆受けしやすいポップロックに作り変えるセンスは相変わらず優れている。
そしてキーボード、ジェイムスの個性。軽快なピアノの音から、恐怖映画の不気味な音、自然をフィーチャした効果音など、じつに多彩。今作では裏切りについて歌っている曲が多いそうだが、そこではいろいろな裏切りのパターンについて歌っている。たとえばヒーローが最悪の人物だったと知ったときの失望(自分に対する裏切り)や、彼女が約束を破ったときの裏切りなどがある。そこには繊細な心が傷つけられたときのもの悲しさ、失笑を交えた皮肉といった、いろんな感情がある。その表現を深いものにしているのがキーボードの効果音なのだ。
一貫してネガティヴな内容を歌ってきた彼らだが、それにしても今作の歌詞には、<ぼくの罪は時間の欠乏><すべては終わり過去となった。>など、意味深な言葉が目立つ。ボーカルのマットはインタビューでとくに歌詞に意味がないと語っていたが、このアルバムを最後に、彼らは解散をしてしまう。歌詞の内容を要約すると、バンドの多忙さがメンバーの関係を悪化させ、解散へと追い込んだのではないかと、考えてしまう。
個人的には全アルバムのなかで、熱量が最も薄れた作品と感じるが、今作のフレーズ構成やメロディーは、後世のエモバンドに多大な影響をあたえている。いまのバンドは、ジミー・イート・ワールドの『ブリード・アメリカン』か『ギルドショー』の、とどちらかから発展している。そういった意味では、高い評価を手にした作品なのだ。