ザ・ニュー・ホワット・ネクスト ホット・ウォーター・ミュージック ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2005-01-07 |
04年発表の7作目。前作のスピーディーでテクニカルなメロデックパンクから、R&Bをベースにしたシンプルなパンクに変化した。もはや彼らの個性である複雑なメロディーはない。シンガロングで掛け合うボーカルもなくなった。男臭いボーカルこそ健在だが、どこか落ち着いてしまった印象を受ける。そこには後ろ姿が寂しげな哀愁が漂っている。
この変化の理由のひとつは、音楽趣向の変化にある。インタビューでジェイソンは、アルバム収録前、ジミー・クリフの『ザ・ヘッダー・ゼイ・カム』をよく聴いていたと、発言した。ジミー・クリフ自体、レゲエ・アーティストで、サウンドに直接の影響は感じられないが、メンバーの黒人音楽への傾斜が、バンドに対する情熱が薄れ始めている証ではないか。もはやエネルギッシュなパンクより、味わい深い枯れた円熟味のほうが好きなのだ。
といってもそんなに悪いアルバムでもない。ギターはテクニックよも、ヴァラエティー豊かな音にこだわっており、ヴィヴィットで、感情移入しやすい。そこには、苦悩の叫びや、切なさや、諦観に彩られてた制御のきいた歌声の曲がある。表情豊かな作品なのだ。攻撃的な男臭い感情だけで押し通すのではなく、諦念や弱さやなど人間臭い表情を初めてみせた。感情的にグッとくるし、そういった意味ではいい作品だ。
なおこの1年後には、チャック・ラガンが、アゲインスト・ミーのトム・ガベル、ルセロのベン・ニコルズ、妻のジル・ラガンらと、パンクバンドによる、アメリカルーツ音楽の精神に立ち返るフェスティバル、“リバイバル・ツアー”立ち上げた。そのプロジェクトと、ソロ活動に専念するため脱退を決意する。そして1年後の06年5月にホット・ウォーター・ミュージックは、解散を発表した。