MADINA LAKE(マディーナ・レイク)
『FROM THEM, THROUGH US, TO YOU(フロム・ゼム、スルー・アス、トゥ・ユー)』

From Them Through Us to YouFrom Them Through Us to You
Madina Lake

Roadrunner Records 2007-03-26
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まるで帝政ロシアをイメージさせる崩壊と黄昏の美しさ。まるでアンティーク家具のような重く暗いノスタルジー。07年に発表したデビュー作は、そんな世界観がある作品だ。基本になっているサウンドは、ガンズ&ローゼス直系のハードロックとエモ、オルタナィヴ、コーンなどのヘヴィーロック。そこにアンティーク家具のようなノスタルジーなプログレッシヴな世界観を加えた。色々な要素が混ざったサウンドだ。近年、アトレイユやアレサナ、プレスザフォールなど、パンクとメタルという垣根を超越したミクチャーサウンドを展開している。――端的に説明するなら、スターティングラインなどのポップパンクとコーンなどのヘヴィーロックが何のこだわりもなく平気で融合されている。彼らもその一角を担っているバンドといえるだろう。

 
 
そのなかでも彼らの特徴といえるのは、近代末期のどろどろとした陰湿な雰囲気と、虫を踏み潰してせせら笑うような無機質な残虐性。ウジ虫や牛の内臓を食べたエピソードもさることながら、サウンドにも感情的なぬくもりはなく、とこか殺伐としている。ヘヴィーなパートの部分では理性が吹き飛ぶような激情はない。ピアノやキーボード、ギターのメロディーなどの静の部分ではただ淡々と冷たい音をかき鳴らしている。まるでバタフライナイフを常時見に付け、気に入らないことがあれば斬りつけて来るような、そんな怖さと残虐性がある。

 

そもそもマディーナ・レイクというバンド名は、ベースのマシュが作った物語の架空の街の名前だそうだ。そのストーリーは、マディーナ・レイクで有名な社交家アデリアが謎の疾走を遂げ、そのあと街が混乱に陥るといった内容らしい。その後のアルバムでそのストーリーが展開されていくそうだ。そういった部分も含め、まさにプログレッシヴロックの世界観の現代ヴァージョンといえる作品だ。時代は人間的な熱さや攻撃性よりも、機械的で無機質なものや幻想といったものを求める方向に向かっている。それを象徴した作品ともいえる。