MY CHEMICAL ROMANCE(マイ・ケミカル・ロマンス )
『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE(スウィート・リベンジ )』

スウィート・リベンジスウィート・リベンジ
マイ・ケミカル・ロマンス

ワーナーミュージック・ジャパン 2004-07-21
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04年発表の2作目。最高傑作。この作品で、ホラー映画と漫画に影響をうけた黒装束の衣装と、ミスフィッツのゾンビメイクを合わせたヴィジュアルに、弾丸のような勢いのメロデックなサウンド、ラブロマンスや死にたいする考察をホラー映画の世界観で隠喩した歌詞を確立した。その三つの要素が高い次元で交わっているのが、この作品の特長なのだ。

 
 
今作もアイアン・メイデンのような勢いあるサウンドと荒々しいギターとメロディーをベースにしている。だがそこにメロディック・パンクや、ゴズの耽美なメロディー、ホラー映画の効果音やコーラスとスクリームなどの要素を加え、彼らならではのオリジナルティーを確立している。

 

彼らの進歩はサウンドだけではない。歌詞も進化している。今作ではリベンジをテーマに、歌詞を作ったそうだ。だが個人的にはやはり“死”がこのアルバムの重要なキーワードになっているように思う。それが顕著なのが1曲目の“ヘレナ”。この曲は幼少のころから育てられた祖母の死に対するオマージュだそうだ。ジェラルド自身「大切な人を失う恐怖と祖母の最後に立ち会えなかった自己嫌悪から生まれた曲」と発言しているが、そこには悲しみを感じさせる内容はない。いつまでもそばにいる存在として語りかけている。もちろん彼らのなかには祖母は重要な存在で、悲しみを感じているのは確かだ。片腕をもがれるほどの苦しみを味わったに違いない。だがその辛さをあえて口にせず、屈折した表現で祖母への想いを歌詞にしている。<きみは誰かの心を傷つけるたび、どれほど最悪な喜びを得るだろう>といった内容で。その真意はいままで祖母に育てられたことへの感謝の気持ちと、思い出を胸に刻み込み、忘れないため、あえて苦言を呈しているのだ。その屈折した表現が、彼らならではの世界観なのだ。

 

その屈折した表現の歌詞も最高だが、なによりこの作品の魅力は、体全身からすべてをふり絞って吐き出される尋常でないテンションの高さにある。まるでサウンドに人生のすべてを注ぎ込んでいるようなエモーショナルだ。彼らに言わせれば、精神的に安定しなかった時期らしいが、ここに収められている熱量は尋常ではないし、その全身全霊を注ぎ込んだサウンドには切迫した想いが詰まっている。その息苦しいほどの切迫感は、ダークで妖艶で美しい。甘美なロマンスを感じる。そんな奇跡の瞬間がここに収められている。 それがぼくがこの作品を愛してやまない理由なのだ。