MY CHEMICAL ROMANCE(マイ・ケミカル・ロマンス )
『I BROUGHT MY BULLETS,YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』

アイ・ブロウト・ユー・マイ・ブリッツ、ユー・ブロウト・ミー・ユア・ラヴアイ・ブロウト・ユー・マイ・ブリッツ、ユー・ブロウト・ミー・ユア・ラヴ
マイ・ケミカル・ロマンス

ワーナーミュージック・ジャパン 2009-03-25
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02年に発表されたデビュー作。ニュージャージのエモパンクシーンから出発し、04年発表の『スウィート・リベンジ』で大ブレイクをはたした彼らだが、この時点ではまだ個性が確立されていない。ニュー・ジャージの伝説的なハードコア・バンド、ミスフィッツのながれをくむホラーメイクで、アイアン・メイデンに影響を受けた熱く勢いあるメタルに、エモの繊細でナイーブなメロディーを加えたサウンドを展開。『スウィート・リベンジ』と比べると、ヴィジュアル、歌詞、サウンドなど、すべての部分において荒削りで未熟さを感じる。だがあとに彼らの個性となる素地は固まっている。たとえば歌詞。“スカイラインズ・アンド・ターン・スタイルズ”では9.11で世界貿易センターに飛行機が突っ込んだときにボーカルのジェラルドは、その瞬間を目撃したそうだ。そのとき感じた内容を歌詞にしている。そこでは現実の世界とはかけ離れた不条理な惨劇を見たあとで、友達を失い、心が引き裂かれるような悲しみを感じ、自分は純粋さを取り戻せるのだろうかと訝りながらも、原因を作ってしまったアメリカ人の一人として罪悪感を感じている。あとに彼らの強固なイメージとコンセプトになる<死>というものが、ここではっきりと儚くイノセントなものであることが表現されている。このあとの作品でさらに歌詞に磨きがかかるわけだが、この内容だけでも、文学的な表現にすぐれているし、インテリジェンスと才能の片鱗を感じる。サウンド的にはまだスタイルが確立されていないが、捨て曲がないし、いい作品だ。