Refused (リフューズド)
『Songs to Fan the Flames of… (ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・オブ・ディスコンテント)』

Songs to Fan the Flames of...Songs to Fan the Flames of…
Refused

Burning Heart 2004-05-23
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96年に発表された2作目。これがすばらしい作品に仕上がっている。前作のユース・オブ・トゥディに影響を受けた、変則的なリズムのギターのリフやOiコーラスなどが特徴的なハードコアを、さらに進化させた。ここまでくるともはやユース・クルー・ハードコアではなく、独自の進化を遂げたオリジナルティーあふれるハードコアに仕上がっている。

 

今作ではフガジのいろいろな要素を詰め込んだ実験性あふれるフレーズと、ユース・オブ・トゥディの変則的なリズムのハードコアをベースに、ボーン・アゲインストのようなカオティックな要素、クイックサンドのような裏側でなっているような音、テキサス・イズ・ザ・リーズンのエモーショナルに、リフューズドならではのオリジナルティーを加え、独自な進化を遂げている。

 

とくにすごいのが、簡潔な言葉で怒りを叫ぶスタイルのボーカル、デニスの怒声。尋常でない怒りと闘争心がアルバム全体を支配している。アルバムタイトルにある『ソング・トゥ・ファン・ザ・フレイム・オブ・ディスコンテント』とは、スウェーデンの産業労働者を支援する活動家で、IWWという労働組合のための応援・団結ソングを作っていたジョー・ヒルの“リトル・レッド・ソング・ブック”という曲から採られている。歌詞の内容もその曲からインスピレーションされ書かれ、たとえば “ラーダー・ビー・デッド”では、<あなたの言いなりになって生きるなら、いっそ死んだほうがいい>と歌い、“クルセイダー・オブ・ホープレス”では<彼らは1000の言い訳と謝罪をする。そして同じ過ちを繰り返す>と歌っている。そこには、権力者への反抗と、資本主義というシステムへの欠陥と怒りが込められている。労働者が一生懸命働き生産した利益の上前をピンはねして富をむさぼる富裕層への尋常でない怒り。まさに弱者のためのハードコアなのだ。

 

スウェーデンというアメリカとは離れた土地柄が功を奏したのか、彼らのサウンドはポスト・ハードコアのなかでも独特の進化を遂げている。独特のリズムで怒りを刻み込むようなノイジーで分厚い音のギター、厳かな重低音のベース、雪崩のようなドラム。そこには不穏な空気を漂わせる不気味な静けさに満ちたギターのメロディーが突如激しさへと変わり、急激にギターのイズの洪水が押し寄せて、躁病のようにめまぐるしくギターフレーズがくるくると変化していく展開がある。あとにリフューズドが提示したサウンドがさらに進化してカオティック・ハードコアと呼ばれるようになるが、ちょうどこのころは、実験的なギターのリフやトリッキーなリズムのドラムなどの要素を詰め込んだフガジや、ネオ・サイケデリックな要素をハードコアに取り入れたクイックサンドとは違ったガラパゴス的な進化を遂げた亜種のポスト・ハードコアとして捉えられていたのだ。

 

スローテンポでメタルのリフやヒップホップの要素を取り入れたニュースクール・ハードコアがシーンの主流となっていた当時、突然変異な進化を遂げた彼らのハードコアには唯一無二のオリジナルティーがあったのだ。すばらしい作品だ。