Profound Hatred of Man (Reis) Shai Hulud Revelation 2006-08-27 |
06年に発表されたアウト・トラック盤。アルバム・タイトルはもとは97年に発表された3曲入りのデビューEP『ア・プロファウンド・ヘイトレッド・オブ・マン』に、10曲追加収録し、06年に再発されたアウト・トラック集だ。アルバムを1枚しか発表していないのになぜアウト・トラック盤なのかといえば、97年から00年にかけて、彼らは、オムニバスやスプリットにたくさん曲を提供してきたからだ。この間の彼らの活動を振り返ると、99年の半ばには、ボーカルのチャドがニュー・ファウンド・グローリーのギタリストに専念するために脱退。Geert Van Der Veldeにボーカルが代わった。ドラムもスティーヴがファーザ・シームス・フォーエバーに専念するために脱退した。主要メンバーの脱退が重なり、まともに活動をすることが出来なかった。メンバーが安定していないからアルバムを制作するのが無理で、サウンドも、ハードコアよりなのか、それともメロディック路線で行くのか、いろいろと試行錯誤を繰り返している時期だった。
収録されている曲は、97年に発表された3曲入りのデビューEP『ア・プロファウンド・ヘイトレッド・オブ・マン』から、3曲、98年に発表されたニューヨークのハードコア・バンド、インデシションとのスプリット『ザ・フォール・オブ・エブリー・マン』から3曲、00年に発表されたニュースクール・ハードコア、アナザー・ヴィクティムとのスプリット『ア・ ホール・ニュー・レベル・オブ・シックネス』から3曲、00年に発表されたボーイ・セット・ファイアとのスプリット『Crush ‘Em All Vol. 1』から1曲、レベリューションのコンピレーション・アルバム『from Revelation 100 compilation』から1曲、未発表曲2曲の計13曲が収録されている。
シンガロング・スタイルを取り入れた“フェイレス・イズ・ヒー・フー・セイズ・フェアウェル・ホエン・ザ・ロード・ダークンス”など、実験的な様相も多々ある。そのなかでも個人的に気になったのがカヴァー曲。ここでカヴァーをしているバンドは、初期ハードコアのバッド・ブレインズ、バッド・レリジョンやNOFX勢のメロディック・ハードコア、スラッシュメタルのメタリカ、デトロイトの極悪オールド・スクール・ハードコア・バンドのネガティヴ・アプローチの5バンド。しかもどのカヴァー曲もそのバンドを代表する有名な曲ばかり。とくに印象に残ったのが、バッド・レリジョンの“アナスィーザ”とネガティヴ・アプローチの“ロスト・ケース”。“アナスィーザ”では、断片的なメロディー以外、原曲の面影がない。ボーカルを含めたメロディーが魅力な曲だが、デス声が全面に出てヘヴィーに仕上がっている。逆にまったくメロディーのない“ロスト・ケース”は、メロディーが加えられ滅茶苦茶な展開のカオティック・ハードコアな曲に変貌を遂げている。両者とも滅茶苦茶なカヴァーになっている。
メロディックなバンドのカヴァーにはヘヴィーな要素を加え、逆にヘヴィーなサウンドのバンドには、メロディックな要素を加える。間逆な要素を加える事によって、自分たちのサウンドの個性を模索している姿勢がうかがえる。彼らの個性が確立する作品を発表するのは次作以降からだが、その個性を探るための試行錯誤がうかがえ、彼らのルーツが理解できる作品だ。