Hold Fast: Acoustic Sessions Face To Face Fat Wreck 2018-07-26 |
18年に発表されたアコースティック・アルバム。過去の作品から10曲選び、シンプルなアコースティック・ギターのメロディーに、アレンジされた作品。大抵のバンドはエレキ・ギターの演奏部分をアコースティックギターに置き換え、語り引きをしているという内容が多い。だがこの作品では、どの曲も綿密なアレンジに徹底的にこだわっている。アイリッシュ・トラッドからフォーク民謡、小川のせせらぎのようなキラキラメロディーなど、伝統音楽のアレンジや美しいメロディーに変更し、原曲の熱意を失わず、やさしさと慈しみにあふれた作品に仕上がっている。原曲のエモーショナルな魅力をさらに引き出しているのだ。
ここに収録されている曲は、1作目の『DontTurnAway(ドント・ターン・アウェイ)』から2曲。2作目の『BigChoice(ビック・チョイス)』から2曲。3作目の『face to face(フェイス・トゥ・フェイス)』から2曲。5作目の『Reactionary(リアクショナリー)』から1曲。6作目の『How To Ruin Everything(ハウ・トゥ・ルーイン・エブリシング)』から1曲。7作目『Laugh Now, Laugh Late(ラフ・ナウ,ラフ・レイト)』から1曲。9作目『Protection(プロテクション)』から1曲。計10曲が収録されている。
おそらくこの選曲になった理由は、ファンが喜ぶ人気のある曲を選んだのだろう。むかしは自分たちが演りたい曲しか作らないイメージが強かったバンドだが、ファンの気持ちを考えるようになった。そういった意味ではずいぶん丸くなった。それにしても喜怒哀楽に富んだ内容に仕上がっている。流行に左右されず自分を貫く“All for Nothing(オール・フォー・ナッシング)”から、自分の過ちを認めた“Shame on Me(シェイム・オン・ミー)”、酷いときでも決して下を向かない“Velocity(ヴェロシティ)”、挫けそうな弱い自分をはげました“A-OK”⑥、など、多彩な感情が表現されている。
そこには何をやってもうまくいく絶頂期から、ファンの失意を買った迷走期、ファンの期待に応えようと心境が変わった円熟期と、フェイス・トゥ・フェイスの紆余曲折のあったバンドの歴史とその時に心境が、この作品一枚に凝縮されている。アコースティック・アルバムといっても、そこには想いが込められている熱さ伝わるいい作品だ。