サンディエゴ出身のTravis Trump(トラヴィス・トランプ)とRob Trump (ロブ・トランプ)の2人によるグラインド・コア・バンドの過去の音源をすべて網羅したコンプリート盤。2人の正体は謎とされているが、動物虐待や環境破壊を反対する姿勢を掲げていたCattle Decapitation(キャトル・デカピテイション)というグラインド・コア、デス・メタル・バンドで活動していたTravis Ryan(トラヴィス・ライアン)と、Pinback(ピンバック)というポストロックバンドで活動していたRob Crow(ロブ・クロー)の2人によるプロジェクトといわれている。
この作品に収録されている内容は、
2016年11月5日リリースのThat Makes Me Smart EP。
2017年1月20日リリースのTo All The Broads I’ve Nailed Before EP。
2017年3月11日リリースのIf You Thought Six Million Jews Was A Lot Of People, You Should’ve Seen My Inauguration EP。
2017年5月23日リリースのIf You Wanted To Qualify For Health Insurance, Then Maybe You Shouldn’t Have Gotten Raped?
2017年12月1日リリースのMake America Say Merry Christmas Again EP。
Thoughts EP。
Prayers EP。
The Golden Age Of Willful Ignorance EP。
の計8作品すべてが収録されている。
Anal Cunt (アナル・カント)に多大な影響を受けて、バンド名をアナル・トランプにしたらしいが、それにしてもジャケットと曲のタイトルがヤバすぎる。オ〇ニーしているトランプの写真だったり、“PTSD Is Gay(心的外傷後ストレス障害者はゲイ)”、“The ACLU Is Gay!(アメリカ自由人協会はゲイ)”、“Make America Great Again(アメリカを再び偉大にする)”、“Santa Is Real, But Climate Change Is A Hoax(サンタクロースは実在するが、気象変動は偽りだ)”、“Journalism Is Gay(ジャーナリズムはゲイ)”、“Nobody Respects Women More Than Me(誰も私より多くの女性を尊重しない)”、“If It’s Alright With Putin(もしプーチンと一緒なら大丈夫)”など、トランプ大統領の過去の暴言や発言を曲のタイトルにしている。そのタイトルからは、女性蔑視、傲慢、差別、嫌味、人を見下した態度といった、嫌悪感を募らせる感情がトグロを巻いている。
ほとんどの曲が10秒以下のファストな曲。躁病的な高揚感と落ち着きのなさを感じるドラム。不快なノイズを垂れ流す圧倒的な音圧のノイズ・ギター。行き過ぎたジョークのときに感じる狂気のようなボーカル。精神異常者のようなハイで狂気に満ちた狂ったスピードに、トランプの差別発言の音声を挿入したサウンド。
そこでは人種差別や庶民階級を見下す内容を歌うことで、富裕層のトランプの傲慢さを浮かび上がらせている。重低音で怨霊の声のようなグラインドコアにDead Kennedys(デッド・ケネディーズ)やCrass(クラス)などに影響を受けた相手を愚弄したシニカルなユーモアをに取り込み、アッパーでハイテンションに進化させた。反体制的な姿勢が貫かれパンクな精神を感じる。今年発売された作品のなかは、最も過激で衝撃を受けた作品だ。