ANOMALISTIC (イナモリスティック)
『HUMAN DECIMATION(ヒューマン・デシメーション)』

Human Decimation

ブラジル出身のブルータル・デスメタル・バンドの14年に発表されたデビュー作。ブルータル・デスメタルのなかでも、高速ドラミングとガテラル・ボイスが印象的なスクラビング・デスメタルの始祖であるDevourment(ディヴァウアメント)から進化したバンド。

 

だがこのバンドの場合、インダストリアル・ミュージックというか、本当の意味での工場の機械音を取り入れている。道路工事の掘削機のような高速で地面をたたく金属音のドラム。地中からゴボゴボと湧き出るように連続してゲップを放っている溺死ボーカル。音の厚みが増したノイズギターとひたすら刻み続ける重厚なギターのリフ。収録されているすべての曲が同じに聴こえるほど、飽きもせず同じ動作を正確に連続して繰り返すベルトコンベアのようなサウンド。感情の余地が入り込む隙間がない機械的な無機質さが印象的だ。

 

大抵のバンドが伝えたい想いや怒りのはけ口などの感情論や、オリジナルティーあふれる音楽性を追求する姿勢が、音楽活動を続けていくうえで重要なモチベーションになっている。だがこのバンドの場合、息が詰まるほど退屈な日常を、来る日も来る日も正確でパワフルに実行するマシーンのように、同じ動作を連続して繰り返している。そこには自分の存在意義や功名心などを考える思考の余地や感情論など全く存在しない。ジャケットの与えられた作業をただ処理する殺戮ブルドーザーのように、ただただ不快な音を垂れ流し続けている。

 

大量生産するロボットのように感情と思考を徹底的に排除した。ブルータルデスメタルのなかでも際立った個性を放っている作品なのだ。