PROMISE BREAKER(プロミス・ブレイカー)
『Televiolence(テレヴァイオレンス)』

ペンシルベニア州出身のポスト・ハードコア・バンドの3作目。ペンシルベニア州といえば、近年CODE PRENGE(コード・オレンジ)やJESUS PIECE(ジーザス・ピース)などのエクスペリメンタルなハードコア・バンドを輩出し、独特な個性を持ったバンドが数多く存在する。PROMISE BREAKER(プロミス・ブレイカー)もまたコードオレンジやジーザスピース、ヴェインと同じく、ゆったりとしたスローテンポのリズムのダウナー系ノイズ・ハードコアに、グラインドコアやストナーロックやブルータル・メタルなどのアッパー系ハードコアが合体した、新タイプのハードコアを提示しているバンドなのだ。

 

自らをペンシルベニアNU VIOLENCEという呼び方をしている彼らのサウンドとは、テレビのチャンネルを高速で入れ替え、感情が目まぐるしく変わるようなパニック障害のような混乱した精神が特徴だ。そのサウンドはコードオレンジやジーザス・ピースからの影響を多大に感じる。だが邪悪な祈りをする魔界をイメージさせる暗黒ノイズドローンのコードオレンジや、葬式の厳かなムードが漂っているジーザス・ピースと比べると、もっと激しく躁病的でエネルギッシュ。狂ったほど病的で両者とはまた違った世界観を確立している。

 

デビュー作はデスコアや、KORN(コーン)のトラウマのようなおどろおどろしい音を、ジーザス・ピースのような激しいノイズ系のハードコアに取り入れた作品だった。ブラストビートなどの要素を取り入れ、さらにカオティックに深化した2作目。

 

そして今作では、100Wのテレビに200Wの電気を注入し爆発しているようなエナジーと暴力的な衝動が、さらに拍車がかかっている。ありあまっているフラストレーションを爆発させシンガロングするコーラスや、不安性な精神を紡ぐ警告音、デス声、地響きなど、あらゆるヴァイオレンスな音が集約され、アルバムの後半では不穏でありながらも静かで穏やかな曲が多く占められている。そして印象的なのが激しく駆け抜けたあとに20秒ほどの沈黙から始まる“Thing”。そこでは暗い部屋でテレビの明かりだけが灯り、企んでいるような不気味な感情を紡ぎだしている。今作では圧倒的に静謐の使い方がうまくなった。

 

ダウナー系ノイズ・ハードコアにヴァイオレンスな激しさを加えたサウンドスタイルを追求し、オリジナルティーを確立した。技術的にも円熟味を増し、彼らの最高傑作といえる内容だ。