Somerset Thrower
『Paint My Memory(ペイント・マイ・メモリー)』

ボストン出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの2作目。ボーカルの歌い方やコード・ギターからは、Texas Is the Reason(テキサス・イズ・リーズン)からの影響を多大に感じる。

 

エモーショナル・ハードコアなサウンドが特徴のバンドだが、エモ特有のウジウジとした女々しいさや、エモーショナル情動はあまり感じられない。60年代のビンテージ古物のアルバムジャケットが象徴しているとおり、ノスタルジーな感覚と味わいを大切にしているバンドなのだ。

 

エモーショナル・ハードコアと、メロディーギターに重点を置いたサウンドで、情熱の奥に潜む憂いや逡巡といった感情を汲み取っている。とくにウェットなメロディーギターからは、心の奥底にある葛藤を洗い流すような、スライドしていく蜃気楼のような幻想的なギターが印象的だ。掠れたエモーショナルな歌声と、憂いと逡巡を帯びたメロディーと合わさり、ビンテージ味わい深さを形成している。

 

そのビンテージな味わい深さとは、幼かったころの楽しい思い出や、これから街が発展し活気と希望に満ちあふれているころのようなノスタルジーな郷愁。時代と思い出が鮮烈に刻み込まれているサウンドなのだ。

 

けっして最先端の流行や、実験的な音楽を追求しているバンドではないが、アナログ的な空気感をここまで刻み込んだバンドも珍しいだろう。