Tooth and Claw(トゥース・アンド・クロウ)『 Dream of Ascension (ドリーム・オブ・アセンション)』

Earth Crisis(アースクライシス)のScott Crouse(スコット・クルース)、Die Young(ダイ・ヤング)のDaniel Austin (ダニエル・オースティン)、Magnitude(マグニチュード)のCameron Joplin(キャメロン・ジョプリン)というヴィーガン・ストレートエッジ・ハードコアの重鎮たちによって結成されたバンドのデビュー作。

 

コロナウイルスの影響によって自粛期間中に制作された作品で、どのメンバーもサブプロジェクトとして活動しているようだ。そのサウンドは、アースクライシスのメタリックなハードコアをベースに、メタリックなギターや、叙情的でダークなメロディーフレーズを取り入れ、90年代ニューヨーク・ニュースクール・ハードコアをさらに深化させたサウンド。

 

ハンマーで叩きつけるようなノイジーで金属的な重厚なギターのリフに、破滅の淵でまどろんでいるような耽美でダークなメロディーが絡む展開。まるで心の奥底に潜む弱さを、内省的に深く見つめているような感覚を受ける。激しくシリアスで厳しさの奥底にある弱さを感じさせるサウンド。

 

歌詞はヴィーガン・ストレートエッジ・バンドらしくストイックで日常的で内向きな内容が多い。“Your Crucifixion (あなたのはりつけ)”では、苦しみを乗り越えたとき、最良のものを手に入れられると歌い、“Time’s Desire (時間の欲望)”では、哲学者『シモーヌ・ヴェイユ』の<美と不幸が真理に至る道になる>という考えを引用し、苦しみと恐怖を乗り越えた先にある真理を追究している。キリスト教的な神の善と、欲望などの悪の心。そんな内面的な葛藤と闘いや、自分を厳しく律し、苦しみの先にある最良な真理を追求しているバンドなのだ。

 

シリアスでストイックなハードコア。ここまで内面を追求しているバンドもそうはいない。ヴィーガン・ストレートエッジ・ハードコアの極北の位置にいるバンドなのだ。