17年に発表された前作『Interiors(インテリアズ)』から、引き続き5年ぶりに発表された4作目。おそらく前作が好評だったのだろう、再結成してからコンスタントに活動を続けている。
Echo & the Bunnymen(エコー&ザ・バニーメン)のようなサイケデリックから、シューゲイザー、White Fence(ホワイト・フェンス)などの現代的なサイケに、ハードコアなギターを合わせたサウンドで、当時としては唯一無二のオリジナルティーを解き放っていた。21年経った現在でも、まったく古さを感じない。古さどころか、シュールレアリスムなどの近代アートの要素を取り入れ、むしろ先鋭的とっても過言でない。
そして今作でも先鋭的なシュールレアリスムの世界観を踏襲している。アルバムジャケットは、日本人のイラストレーター俵谷哲典のイラストを起用。まるで不思議の国のアリスのメルヘンチックな世界を、魔界にゆがませた独特なサイケデリックな世界を構築している。
今作では、サイケディックで陶酔感あるメロディーは薄れ、激しいギターを中心に、よりラウドなサウンドを展開している。“Lightning Field”では、ハードコアギターの激しさのなかに陶酔感を生み出し、“Missile Command”では、ブンブンうねるベースが、闇で静かに待ち続けるかのような独特な世界観を作り出している。ハードコアの激しいギターの先にある心地よく安らぎに満ちた世界。ハードコアの激しさを追求しながら、二律背反する陶酔感や安らぎに満ちたサウンド。それが『Distant Populations(ディスタント・ポピュレーション)』の魅力なのだ。
ボーカル&ギターのWalter(ウォルター)が「SNSの発達によって、誰もがお互いにつながっている一方で、とても距離が離れている。人間社会とは社会集団として自分たちの存在があり、同時に孤独などの個人的な関係がある。その一人と大衆という矛盾する二重性を探り、同時に疎外感と孤独を考察することがアルバムのコンセプト」。と、発言している通り、二律背反は歌詞のテーマにもなっているようだ。
激しくノイジーに不快な雑音かき鳴らすことによって陶酔感が生まれるというアンビバレンスな魅力。前作ほどメロディックではないが、実験的な要素がふんだんにある作品。今作も今年のベストアルバムの10枚に入ってくる素晴らしい内容だ。