ロサンゼルス出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの3作目のEP。パワーバイオレンス・バンド、Regional Justice Center(リージョナル・ジャスティス・センター)のドラムで活躍しているIan Shelton(イワン・シェルトン)を中心に結成されたバンドで、ここではギターを中心としたメロディックなサウンドを展開している。
全作品を通してThe Jesus Lizard(ジーザス・リザード)やJAWBOX(ジョーボックス)やBurning Airlines (バーニング・エアラインズ)に影響を受けたエモーショナル・ハードコアを展開している。ギターメロディーが中心のバンドで、サイケデリックに歪んだメロディーから、透き通ったメロディー、アコースティックギターのメロディーにいたるまで、ギター・フレーズにこだわりを持ったバンドなのだ。
サイケデリックに歪んだメロディーや透き通ったメロディーが魅力の『Demo(デモ)』と『My Life Is Over(マイ・ライフ・イズオーバー)』。アコースティック・ギターを取り入れた『All Roads Lead To The Gun(オール・ロードズ・リード・トゥ・ザ・ガン)』と、過去の作品と比べると、今作では激しいギターが中心のエモーショナル・ハードコアなサウンドを展開している。
叩きつけるスローテンポなドラムに、シャウトするボーカルとギターが、混然一体となって音の刻印を刻むように進んでいく。“Disposable Plastic Trash(ディスポーザブル・プラスティック・トラッシュ)”はベースのみとフレーズとギターのみのフレーズが交互に入れ替わる展開で、一歩間違えれば音の調和が崩れる際を、無理を承知で渡るような、挑戦的な姿勢がうかがえる。“Background Kids(バックグラウンド・キッズ)”は、ギターメロディーを全面に出した曲で、神経質に響くギターのメロディーとボーカルの熱さというコントラストが、退廃と希望が混然一体なったような不思議な雰囲気を醸し出している。どの曲も実験的なサウンドで、オリジナルティーあふれる独特なサウンドを追求している。
メロディックなサウンドとは対称的に、<軍隊の銃>と名付けられたバンド名や、『すべての道は銃に通ず』というEPでは、銃による虐殺をコンセプトにしている。歌詞は残虐なイメージや退廃的で絶望的な内容が多い。“私の人生は終わった”や“使い捨てプラスティックゴミ”、“進歩的な社会のための新しい法律”では、<麻薬や環境破壊、失望による怒りと暴力>などについて歌い、人間の醜いダークサイドを歌詞に取り上げている。
熱く明るくメロディックなエモーショナル・ハードコアに人間のダークサイドを歌った歌詞。まさに二律背反する内容で、ジキル博士とハイド氏のような解離性同一性障害という病んだ精神を表現したバンドなのだ。サウンドと歌詞を含め従来のハードコアパンクの枠を超えた音楽性を追求しているバンドなのだ。